2022 Fiscal Year Annual Research Report
RIM法を応用したPIV流速計測による河川の乱流輸送過程と樹林化メカニズムの解明
Project/Area Number |
22J21373
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 知将 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 乱流構造 / 河道内植生 / 礫床流れ / 浮遊砂輸送 / 屈折率整合法(RIM) / PIV |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究課題として,まず屈折率整合法(RIM)を応用したPIV流速計測による礫河床内部の流れ場の可視化計測に取り組んだ.室内水路において模擬礫床河川を再現し,水と屈折率が等しい低屈折率透明材質である高吸水性ポリマー(SAP)を模擬河床礫として用いることで,従来計測が困難であった礫背後の平均流・乱流構造の計測に成功した.また,実河川における樹林化の要因の一つである礫河床への種子の定着過程を明らかにするために,礫河床近傍および内部における浮遊粒子の挙動と乱流構造の関連についても検討した.模擬河床内部における粒子挙動とその周囲の流れ場の同時計測結果から,乱流の組織構造が浮遊粒子の礫河床への輸送および河床内部からの浮上を引き起こすことが示された. 次に,植生群落拡大の要因となる群落周辺への浮遊砂堆積過程を理解するために,植生群落周辺における乱流現象の解明に取り組んだ.植生のパラメータとして植生高さや植生要素の柔軟性に着目し,曲げ剛性の異なる4通りの植生群落周辺の流れ場に対してPIV計測を実施した.その結果から,倒伏高さおよび植生揺動の変化が植生先端付近における鉛直渦および群落外縁における水平渦による運動量輸送過程に影響することが示唆された.一方で,群落近傍における渦構造や二次流の三次元的構造については十分な検討がなされていないほか,植生揺動形態と運動量輸送・浮遊砂輸送との関連についても未解明な点が多く残されている.これらの点についてのより詳細な考察を次年度以降の課題とし,引き続き実河川における乱流輸送現象の解明について水路実験を通じて取り組んでいきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屈折率整合法(RIM)を応用したPIV流速計測により,従来計測例が少なく未解明点が多く残されていた礫河床近傍における乱流の組織構造の可視化計測に成功した.また,PIVによる流速場と粒子挙動の同時計測により,細粒粒子が河床内部から浮上し,礫床上へと輸送される過程の現象モデルを明らかにした. また,水路中央に遍在する植生群落流れを対象としてPIV流速計測を実施することで,植生高さや植生要素の曲げ剛性といった植生パラメータが渦構造やそれに伴う運動量輸送過程に及ぼす影響を明らかにした.さらに,これらの流速計測結果と浮遊砂堆積領域の比較から,乱流構造の変化が植生群落近傍における浮遊砂の堆積領域を決定することが示唆された. 以上のように,実施例の少ない計測手法を導入した室内水路実験を通じ,礫床や植生群落を伴う河道内の物質輸送過程の一端を解明することができた.このような点から,本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
礫床流れにおける粒子輸送過程については,RIM-PIVにより解明された乱流輸送現象モデルに基づいた粒子輸送の評価を試みる.粒子の物性値や水理条件の異なる幅広いケースを対象に粒子挙動の追跡を実施し,step-lengthやwaiting timeなどの統計量の評価とその適切なスケーリング手法についての考察を行う. また,植生群落近傍の乱流構造と浮遊砂輸送の関連について,より詳細な現象解明と一般性の検証に取り組む.群落形状の影響を解明するために,群落幅や植生高さを変化させた複数ケースの流れ場を対象に水路実験を実施し,PIVを通じて乱流構造だけではなく二次流の3次元構造についても明らかにする.また,これらの流れ場について,細粒土砂を水路に投入して堆積状況の観察を行い,流速計測結果と堆積領域の比較から植生群落近傍におけるウォッシュロードの輸送過程について考察する.さらに,植生の柔軟性の影響については,PIV-PTV法による流速と植生変位の同時計測を実施し,乱流構造の3次元構造とその物質・運動量輸送への影響について検討する.
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