2022 Fiscal Year Annual Research Report
毒性配座理論に基づいたアミロイドβの毒性オリゴマーモデルの設計と合成
Project/Area Number |
22J21576
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内野 歩美 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / オリゴマー / 3量体 / 細胞毒性 / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイドβタンパク質 (Aβ) のオリゴマーは、アルツハイマー病の発症において重要な役割を果たしている。本研究代表者の所属研究グループにおけるこれまでの研究から、毒性配座を形成しやすい22位でのプロリン置換体・E22P-Aβ40の平行型3量体モデルでは、38位を架橋長3炭素原子のリンカーで架橋したモデルが、架橋長5炭素原子のモデルよりも高い細胞毒性を有することが示されている。そこで今年度は、Aβ40の平行型3量体モデルの構造最適化を目的として、さらに架橋長の短い2炭素原子のリンカーで38位を架橋したAβ40の3量体モデルを合成した。 3価性Fmoc保護アミノ酸リンカーは、総工程数10工程、総収率9.2%で合成した。次に、このリンカーにより38位を架橋したE22P-Aβ40の3量体モデルを、マイクロウェーブ型ペプチド合成機で固相合成した。さらに対照として、対応する野生型Aβ40の3量体モデルも合成した。 合成した3量体モデル2種について、凝集試験ならびに2次構造解析を実施した結果、いずれのモデルもアミロイド線維や特徴的な2次構造をほとんど形成しないことが明らかになった。また、イオンモビリティ質量分析法により、E22P変異体では3~18量体、野生型では3~9量体の形成が確認された。一方Native PAGEでは、30量体を超える高分子量オリゴマーの形成も示唆された。さらにMTT試験により、いずれのモデルもE22P-Aβ40単量体と同程度の細胞毒性を示した。野生型の3量体モデルがE22P変異体と同程度の高い毒性を維持していたことは、単量体や対応する2量体モデルにはない3量体モデル特有の特徴であった。今回合成した野生型の3量体モデルは、毒性配座を適切に反映したモデルとして、毒性オリゴマー特異抗体の開発に有用と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、平行型ならびに3回対称型(プロペラ型)Aβ40の3量体モデルにおいて、リンカー架橋長の最適化を計画していた。平行型3量体モデルでは、38位を架橋長2炭素原子のリンカーで架橋したE22P-Aβ40の3量体モデルを合成した。さらに対照として、対応する野生型Aβ40の3量体モデルも合成した。これらの各種構造機能解析を実施し、過去の研究結果と比較することによって、38位で架橋したAβ40の3量体モデルの構造最適化を達成した。 一方、3分子のAβ40が3回対称型に配置した3量体モデルについては、当初計画していた3量体モデルの合成には至らなかった。現在、新規リンカーの合成経路を鋭意検討中である。これらの検討を通じて、目的とするリンカーの合成を行う上での問題点が明らかになり、今後、合成経路を考案する上で有用な知見を得ることができた。従って、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
所属研究グループにおけるこれまでの研究から、3分子のAβが3回対称型に配置したプロペラ型 3量体モデルについて、36位を架橋長5炭素原子のリンカーで架橋したものが、E22P-Aβ40単量体と比べてやや低い細胞毒性を示すことが明らかになっている。今後はこのモデルについて構造最適化を目指す。具体的には、より架橋長の短い3炭素原子のリンカーで架橋したモデルを合成し、その構造機能解析を行う。この合成に用いる短鎖リンカーの合成には、これまで用いてきた長鎖リンカーの合成経路が適用できないことが、昨年度の研究によって明らかになった。そのため、新たな合成法を現在検討中である。 目的とする短鎖リンカーが合成できれば、これを用いて36位で架橋したE22P-Aβ40の3量体モデルを合成し、凝集能や細胞・シナプス毒性などの評価、CDスペクトルやTEMによる構造機能解析を実施する。これまでの長鎖リンカーで架橋した各種3量体モデルの構造機能解析結果との比較から、3回対称型3量体モデルの構造と毒性との関係について新たな知見を得る。これまでのモデルよりも高い毒性を示した場合、対応する野生型のモデルを合成し、E22P変異体モデルと同様の構造機能解析を行う。
|