2022 Fiscal Year Annual Research Report
トカゲの果実食が森林種子散布共生系に果たす機能と意義:日光浴と指向性散布の関連性
Project/Area Number |
22J22195
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福山 亮部 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 種子散布 / 爬虫類 / 果実食 / マダガスカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、果実を食べるトカゲが多く知られるマダガスカルの熱帯乾燥林で長期の野外調査を行い、森林生態系における種子散布者としてのトカゲ類の役割の解明を目指した。 2022年度はマダガスカルへ2回渡航し、トカゲ類の果実食に関する調査を実施した。 乾季に実施した調査では、現地の共同研究者とのミーティングや、調査地の下見、トカゲ類の調査手法の確立等を中心に実施した。雨季に実施した調査では、100個体以上のトカゲ類を捕獲し、数日間飼養して得た糞の内容物に種子が含まれるかを調べた。それによって、トカゲがどの程度の頻度で果実を捕食しているか、また、どの種の果実を捕食しているかを調査した。その結果、4種類20個体以上のトカゲ類の糞から植物の種子が確認された。また、捕獲前に実施した行動観察によって、樹上等で果実を捕食する行動も複数回記録された。トカゲ類の糞から得られた種子に関しては発芽実験を行い、そのうち2種類の種子で発芽が確認された。これらのことから、当地においてトカゲ類が森林生態系における種子散布者として、一定の貢献を果たしていることが示唆された。また、トカゲ類に発信器を呑ませて糞として排泄される地点を特定するという手法に関しても、予備的に実施した。その結果、発信器に不具合があった場合を除き、すべての個体(13個体)に関して糞の位置を特定することに成功した。 加えて、調査中に副次的に得られたキバシリヘビ(Dromicodryas)の繁殖行動と体サイズのデータに関する論文を出版した(Fukuyama et al. 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスによる渡航制限により予備調査が実施できなかったため、2022年度はより基礎的なトカゲ類の食性情報の収集から開始する必要があった。また、雨季の開始時期が例年と異なったため、調査に最適な期間での渡航が叶わず、トカゲの捕獲数が想定よりも少なかった。一方で調査においては、トカゲによる果実食を多く確認できたほか、新手法である特殊なテレメトリー調査も一定の成功を収めるなど、今後に期待できる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は雨季を中心に長期の渡航調査を実施し、追加でデータを収集する。特にテレメトリー調査を重点的に行い、トカゲが糞をする地点を特定するとともに、その場所に糞内容物から得た種子を設置し、林内の別の地点に設置した種子との間で、発芽率、生存率、成長率等を比較する。また、2022年度に糞から得られた種子のうち、一部は休眠期間が長く、発芽に時間を要する種子と考えられたため、現地のアシスタントに依頼し、継続して観察を行う。フィールド調査を行わない時期には、初年度の結果をまとめて国内学会で発表を行う。結果の一部に関してはデータをまとめ、論文投稿の準備を行う。
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