2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規ポリマー空間の拡張に向けた人工Ribosomeの構築
Project/Area Number |
22J22251
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小坂 唯心 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸菌 / リボソーム / 合成生物学 / 無細胞転写翻訳系 |
Outline of Annual Research Achievements |
リボソーム生合成の試験管内再構成は、新規機能を持つ人工リボソームの創出に繋がる。しかし、リボソーム生合成とは、200種近くの因子が相互作用しつつ、既に存在するリボソームが新たなリボソームを合成するという複雑な過程であり、試験管内再構成はこれまで達成されていなかった 。そこで本研究課題では、大腸菌リボソーム生合成の試験管内再構成を確立し、自在なリボソーム改変を可能とすることで、特殊な側鎖および骨格や、非ペプチド結合を含むポリマーを効率よく重合可能な人工リボソームを創成することを目的として設定していた。
令和4年度に実施した研究では、研究の目的のうち、「大腸菌リボソームの生合成を試験管内で再構成可能な系を確立する」という項目を達成した。具体的には、大腸菌無細胞転写翻訳系を用いて、リボソーマルタンパク質(r-protein)遺伝子とリボソーマルRNA(rRNA)遺伝子を一斉に転写・翻訳・アセンブリさせ、リボソーム生合成を可能とする反応条件を探索した。その結果、出発物質である、天然リボソーム・r-protein遺伝子・rRNA遺伝子の各濃度を検討することで、機能的なリボソーム小サブユニットおよび大サブユニットを試験管内で合成することに成功した。さらに、r-protein遺伝子およびrRNA遺伝子への変異導入により、新生リボソームに抗生物質耐性を付与することにも成功した。本成果は、リボソーム生合成を試験管内で再構成した初の例であり、新規機能を持つ人工リボソームの創出を加速させると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究計画で掲げた目標のうち、リボソームの生合成を試験管内で再構成するという項目を達成したためである。研究計画では、リボソームを構成する大小ふたつのサブユニットを個別に試験管内で合成することを目標としていた。遺伝コードのデコーディングを担う小サブユニットに関しては、申請時点から採用開始までの期間で試験管内再構成を達成していた。タンパク質翻訳活性中心が存在する大サブユニットに関して、令和4年度に行った研究で試験管内再構成を達成した。試験管内で再構成されたリボソームの特性解析(リボソーマルタンパク質修飾およびリボソーマルRNA修飾の確認など)についても検証を進めているところであり、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、令和4年度までの研究で確立した、試験管内でリボソームを再構成する系を活用しつつ、新規機能を持つ人工リボソームの創出を進める。試験管内で再構成されたリボソームに関する構造情報は限定的であり、人工リボソームを設計するためには変異体の構造活性相関データの蓄積が必要である。そこで、r-proteinやrRNAに変異を導入した人工リボソーム群を作製して構造活性相関を解析し、非天然ポリマーを効率的に重合可能な人工リボソームを創出するための知見を蓄積する。具体的には、リボソーム触媒活性の中心であり23S rRNAによって構成されるペプチジルトランスフェラーゼセンター(PTC)や、リボソームのPTCの構造の安定化に関与するuL16・bL27などのr-proteinsに対して結晶構造に基づいてさまざまな変異を導入する。それらの変異体群の、天然モノマーおよび非天然モノマーに対する重合効率を調べつつ、人工リボソームの構造活性相関を体系的に記述する。
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