2022 Fiscal Year Annual Research Report
SPH法による氷衛星の内部海の三次元数値流体シミュレーション:コード開発と応用
Project/Area Number |
22J22428
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村嶋 慶哉 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 氷衛星 / SPH法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の観測により、EuropaやEnceladusといった氷衛星で、氷殻表面の割れ目から水蒸気が噴出していることがわかっている。これは表面の氷殻の下に液体の水の領域(内部海)が存在していることを示唆している。液体の水は化学反応を支える溶媒で、生命の誕生に必要不可欠な要素の一つであると考えられており、氷衛星の内部構造、特に温度の分布と進化について理解することは重要なことである。現在考えられている氷衛星の内部海の熱進化のメカニズムは、潮汐変形による加熱が起き、熱が衛星表面まで熱伝導で伝わり、表面からの放射で熱が抜けていく、というものである。これらの熱過程が平衡状態にあることによって内部海が保たれている。同時に、氷殻と内部海の境界では氷と水の間で相転移が起きている。そこで、潮汐加熱、熱伝導、放射冷却、相転移を導入した三次元流体数値シミュレーションを行うことのできるSPH法のコードを開発した。 本研究で開発したコードは、これまで前例のない内部海の形成・保持に必要な4つの物理過程を全て基礎方程式に組み込んだglobalな三次元数値シミュレーションを行うことができるものである。globalな三次元計算であるために、氷衛星全体での水・熱の循環を計算することができ、また、初期条件として非対称的な内部構造を仮定したシミュレーションを行うこともできる。そのため、本研究で行うシミュレーションは氷衛星の内部海の構造を理解する上で非常に有力な手段となる。さらに、本研究で氷衛星の内部海が存在する条件を明らかにすることは、生命が存在できる天体の探査に大きな影響を与えることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SPH法において、相転移を考慮したH2Oの状態方程式の取り扱いが複雑であり、コードの開発が計画よりも遅れた。また、論文の査読・公正に時間がかかっており、計画していた論文の出版には至っていない。論文は現在校正中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず開発したコードの応用として潮汐変形が大きな仮想的な系に適用し、内部海が形成・保持されるために必要な条件について定性的に調べる。 しかし、本研究で開発したコードをEuropaやEnceladusといった太陽系内の実際の氷衛星に適用するためには、計画当初に想定していたよりも解像度を高くする必要があることがわかった。そのため、仮想的な系に対し、パラメータとして衛星の内部構造、惑星と衛星の質量比、公転軌道の離心率・赤道傾斜角・ 平均半径などを変化させ、大量のパラメータスタディを元に統計的な議論をより詳細に行うことを計画している。
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Research Products
(2 results)