2023 Fiscal Year Research-status Report
結晶性高イオン伝導体の共通構造の解明に基づく新規リチウムイオン伝導体の創製
Project/Area Number |
22KJ1982
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成瀬 卓弥 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 固体電解質 / 第一原理計算 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,第一原理計算と機械学習技術を組み合わせ,高イオン伝導体に共通する構造的特徴を解明し,固体電解質材料の新たな開発指針を構築することを目的とする. 2年目となる2023年度は,多様な固体電解質材料のイオン伝導度を理論的に導出するための基盤技術の開発を進めた.当初,材料の拡散係数を理論的に求めるための一般的な手法である,第一原理分子動力学(MD)計算の網羅的な実施を計画していた.しかし,低イオン伝導性の材料では長時間のMD計算が必要となり,正確な拡散係数の導出が現実的な実行時間内では困難であることが判明した.そこで,この問題に対処するため,所属研究機関で開発が進められている多項式機械学習ポテンシャルの活用を試みた.多項式機械学習ポテンシャルは,群論的手法により生成される多項式回転不変量を構造特徴量とし,多数の第一原理計算結果を用いて作成される高精度な原子間ポテンシャルである.これにより,従来の経験的ポテンシャルと同等の計算コストで,第一原理MD計算に匹敵する精度のMD計算が実行可能になると期待される. テストケースとして,典型的なイオン伝導体として知られるLiI(ヨウ化リチウム)の多項式機械学習ポテンシャルを作成し,MD計算を高速に実行したところ,第一原理MD計算の結果と非常に良い一致を示すことが確認された.このように,イオン伝導度計算における本手法の有効性が示唆されたため,多様なイオン伝導度の材料からなる包括的な解析を次年度にて取り組む.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,高イオン伝導体に共通した構造的特徴の解明による新たな材料設計指針の提案という挑戦的な研究である.本年度は,多様な材料系におけるイオン伝導度の網羅計算に取り組む予定であったが,研究過程で従来手法の適用限界が明らかとなったため,課題解決のための基盤技術開発に注力した.当初の計画とは異なったが,前年度(2022年度)において長足の進展があったことを踏まえ,おおむね順調に進展していると総合的に判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,これまでに検討した結晶構造の特徴量化技術と多項式機械学習ポテンシャルによるイオン伝導度計算手法を活用し,結晶構造とイオン伝導性との相関の解明に取り組む.具体的には,まず,多様な材料系に対して多項式機械学習ポテンシャルを構築し,これを用いて長時間MD計算を高速に実行することで,正確な拡散係数およびイオン伝導度を算出する.この際,既知の高イオン伝導体だけでなく,低イオン伝導度が予想される物質も含め網羅的に計算を実施することで,様々なイオン伝導度の材料からなる包括的なデータセットの構築を目指す.続いて,構築したデータセットを利用し,前年度(2022年度)に開発した局所構造オーダーパラメータを特徴量として,クラスター分析や主成分分析などの多変量解析を検討する.以上のように,最終年度となる2024年度は,これまでに開発,検証した技術を活用することで,イオン伝導性と相関のある構造因子の解析を試みる予定である.
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Causes of Carryover |
・当初の予定よりも優れた研究成果が得られたため,次年度にて国際学会で発表するべく,当該資金を充てる予定である.
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