2022 Fiscal Year Annual Research Report
全ゲノム解析による小笠原諸島産ムラサキシキブ属における性表現進化プロセスの解明
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22J23389
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 和俊 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 性決定 / 島嶼 / 植物 / ムラサキシキブ属 / ゲノム / Pool-seq / 性決定遺伝子 / 雌雄異株 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各地の海洋島ではアイランド・シンドロームと呼ばれる普遍的な生物進化現象が見られる。その進化過程を研究することは生物多様性の形成過程を明らかにする上で重要である。植物の雌雄異株化はその進化現象の1つであり、集団の遺伝的多様性を維持するために起きたと考えられているが、その検証や遺伝的背景に関する研究は行われていない。そこで、本研究では小笠原諸島で雌雄異株化したと考えられるムラサキシキブ属オオバシマムラサキを対象に全ゲノム解析を行うことで、海洋島における植物の雌雄異株化のゲノム基盤の解明及び雌雄異株化が遺伝的多様性に与えるフィードバック効果の検証を行い、その進化的背景を明らかにすることを目指す。 令和4年度はロングリードシーケンサーMinION(Oxford社)を使用し、対象種オオバシマムラサキの参照ゲノム配列約430Mbの新規構築を行った。現地調査によって得た雌雄それぞれ約60個体の試料はDNAを抽出した後、Pool-seq法を適用して、個体あたりのDNA量を揃えて混合した雄/雌プールライブラリを作成しシークエンスを行った。Pool-seq法より得られたデータを参照ゲノム配列にマッピングし雌雄ゲノム比較を行った結果、約80万塩基の性決定領域を特定することが出来た。また本種は雄ヘテロ型性決定様式を持つことが示唆された。 続いて遺伝子予測を行ったところ、性決定領域上には約30遺伝子が座乗していることが判明した。その中には花粉稔性に関与する遺伝子や、植物ホルモン調節に関与する遺伝子など性決定との関連が疑われる候補遺伝子が複数個体含まれていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
参照ゲノム配列は全ゲノム解析を進めるにあたって必要不可欠である。令和4年度は研究対象種オオバシマムラサキの参照ゲノム配列を新規に構築することが出来た。これによって、以降のゲノム解析を円滑に進めることができ、性決定候補遺伝子を約30個まで絞り込むことが出来たため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、RNA-seqによる比較発現解析などから性決定遺伝子のさらなる絞り込みを進める。
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