2023 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析による小笠原諸島産ムラサキシキブ属における性表現進化プロセスの解明
Project/Area Number |
22KJ2007
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 和俊 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 雌雄異株 / 性決定 / 島嶼 / ゲノム / RNA-seq / ムラサキシキブ属 / シソ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各地の海洋島ではアイランド・シンドロームと呼ばれる普遍的な生物進化現象が見られる。その進化過程を研究することは生物多様性の形成過程を明らかにする上で重要である。植物の雌雄異株化はその進化現象の1つであり、集団の遺伝的多様性を維持するために起きたと考えられているが、その検証や遺伝的背景に関する研究は行われていない。そこで、本研究では小笠原諸島で雌雄異株化したと考えられるムラサキシキブ属オオバシマムラサキを対象に全ゲノム解析を行うことで、海洋島における植物の雌雄異株化のゲノム基盤の解明及び雌雄異株化が遺伝的多様性に与えるフィードバック効果の検証を行い、その進化的背景を明らかにすることを目指す。 令和5年度はゲノム解析および比較発現解析から本種の性決定に関与している可能性のある遺伝子の絞り込みを試みた。開花ステージ別比較発現解析では、前年度に特定した本種の性決定領域に含まれる花粉発芽口形成に関与する遺伝子の発現量が雌個体で有意に減少していたことから、この遺伝子が雄性不稔に関与している可能性が示唆された。一方で花芽全体での遺伝子発現パターンは雌雄で類似していたことから、本種の雄特異的にみられる表現型変異は特定の組織でのみ起こる遺伝子発現パターンの変化が要因である可能性が考えられた。そこで次に花器官別にRNA-seqを行ったところ、めしべでは雌雄で発現パターンが大きく異なり、雄でのみ有意に発現量が高い遺伝子が多く見つかった。その中には雄だけが持つY染色体に特異的な遺伝子がいくつか含まれていたため、これらの遺伝子が本種の性決定に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、全ゲノム解析及び比較発現解析から本種の性決定に関与している可能性がある有力な遺伝子を絞り込むことが出来たため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は前年度までに構築した全ゲノム参照配列およびゲノムリシーケンスデータを使用して、本種の雌雄異株化が遺伝的多様性に与えたフィードバック効果の検証を行う。
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