2022 Fiscal Year Annual Research Report
他の国際法主体の違法行為に対する国際法上の責任ーー国際機構の加盟国責任を念頭に
Project/Area Number |
22J23438
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 慶一郎 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 国際機構 / 責任 / 国際違法行為 / 国際刑事裁判所 / 権限 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる本年度は、研究計画に概ね沿って、(1)特定の国際機構の権限行使の態様の研究および(2)国際機構法の一般理論研究を並行して行うことができたと考えている。以下、簡単に進捗を報告する。 (1)については、加盟国から国際刑事裁判所(ICC)への権限移譲と同権限の後者による行使に関する包括的な最新の先行研究を綿密かつ批判的に検討する内容の研究報告を6月に行った。その作業によって、ICCの権限に関する現状の議論状況と先行研究の不備の特定を行った。具体的には、ICCの権限をめぐる先行研究は、同権限を加盟国からの被移譲権限として説明する立場と、国際共同体に内在する刑罰権として説明する立場に二分されているが、これらを二項対立的に捉える姿勢自体の問題性や国際機構法の一般理論を踏まえた視点の必要性が明らかとなった。(2)については、各国際機構の具体性を超えて一般理論を構築するために必要な前提を洗い出す作業を行った。具体的には先行研究において国際機構法の「パラダイム」として同定されるfunctionalismの検討をし、重要と考えられる先行研究を検討する内容の研究報告を、国際法研究者の集う私的な研究会にて8月に行った。functionalismは国際機構をエージェント、加盟国をプリンシパルとする一種のエージェント理論であるが、その学説史的起源を探ることにより、国際機構法研究が前提としがちなfunctionalismには更なる前提(国際行政連合的な国際機構観や、国際機構の善性の措定)が存在することを指摘し、その偶有性を一定程度明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記載の通り、ICCの権限をめぐる学説の整理、国際機構法を支えるパラダイムの分析を一致程度終えることができた点では、順調に進んでいるといえる。一方で、ICC以外の国際機構の権限論の検討や、国際機構法の一般理論の存立条件の検討、さらには、これらの検討の責任論との接合等、研究事項をさらに拡大する必要性が認識されたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、特定の国際機構の権限論と国際機構の一般理論双方の研究を並行して継続する。 前者については、今年度中にICCの検討に目処をつけ、国連やEUの権限論の検討に進む。後者については、それぞれ個別の設立条約を有しそれ故各々が特別(sui generis)とも言われる国際機構がそもそもいかなる意味で比較可能で、各機構各論を超えて一般理論が成立するとすればいかなる条件の上でかを検討する。そのために、関連する先行研究や、一般理論の存在を措定していると考えられる国連国際法委員会の作業を検討する。 それぞれの検討につき、定期的に研究報告をする機会を設け、他の研究者の意見も積極的に取り入れながら研究を進める。
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Research Products
(1 results)