2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J23173
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
要石 就斗 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 寒冷刺激 / 接触皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.局所および全身性寒冷暴露が皮膚免疫応答に及ぼす影響の検証 皮膚免疫解析モデルとして、皮膚免疫反応のプロトタイプとして汎用されている接触過敏反応(Contact hypersensitivity: CHS)を用いた。全身の寒冷暴露は、温度調整が可能な飼育チャンバーを購入し使用した。抗原(ハプテン)が皮膚樹状細胞により取り込まれ、リンパ節において抗原特異的エフェクターT細胞が誘導される感作相と、同ハプテンを皮膚に再度塗布した際に、Tc1を中心とした皮膚炎が誘導される惹起相に分けて評価を行った。感作相での寒冷暴露による炎症の変化はみられなかったが、惹起相においては、5℃の環境下で寒冷暴露群では有意に炎症反応の減弱がみられた。続いて皮膚のみの評価を可能にするために皮膚局所への寒冷暴露を、外部に製作を依頼した、耳にのみ局所的に温度の低い風があたる機器を使用したが、有意な結果は得られなかった。 2. 寒冷暴露により機能変化を生じる細胞群の同定とその機能変化の解明 1により全身の寒冷暴露により、CHSの惹起相での炎症反応が減弱することを示した。具体的には、皮膚炎発症の程度を組織学的に評価したのちに、フローサイトメトリーを用いて、浸潤が減弱している細胞の同定を行った。CHSの炎症に主に寄与するTc1細胞、好中球の皮膚への浸潤の減少がみられ、IFNγを産生するTc1細胞の数も減少していることを示した。またTc1細胞が浸潤する基盤となる、真皮での樹状細胞のクラスター形成も減弱していたことを真皮シートの蛍光免疫染色の手法も用いて示した。さらには、炎症に関わるサイトカイン、クラスター形成に関わるケモカインに注目し、表皮でのIL-1αの産生、真皮でのIL-1β、CXCL2の産生が低下していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主にマウスを使用して、局所および全身性寒冷暴露が皮膚免疫応答に及ぼす影響の検証を行うことを主目的としていた。ハプテンを用いた接触過敏反応(Contact hypersensitivity: CHS)モデルにおいて、皮膚免疫応答に変化を及ぼす寒冷暴露条件を検証したところ、惹起相の初期で全身性に寒冷暴露を与えることで炎症反応が減弱した。具体的には、CHSの炎症に主に寄与するTc1細胞、好中球の皮膚への浸潤の減少がみられ、IFNγを産生するTc1細胞の数も減少していた。またTc1細胞が浸潤する基盤となる、真皮での樹状細胞のクラスター形成も減弱していたことを真皮シートの蛍光免疫染色の手法も用いて示した。さらには、炎症に関わるサイトカイン、クラスター形成に関わるケモカインに注目し、表皮でのIL-1αの産生、真皮でのIL-1β、CXCL2の産生が低下していた。以上のように、CHSの惹起相において皮膚における各種炎症性サイトカインの定量的PCR、フローサイトメトリーを用いた皮膚浸潤細胞のプロファイリングにより、炎症低下にメカニズムに迫ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果から、寒冷暴露により表皮角化細胞でのIL-1αを含むDAMPsの放出が抑制され、CHS全体の炎症が低下している可能性を仮説として立てた。今後は表皮角化細胞に注目し、寒冷暴露下での機能変化または代謝変化について、in vitroにて寒冷刺激条件を与え検証し、その表現系を同定する予定としている。上記の手法で機能変化検証が困難な場合は、寒冷暴露前後の皮膚のRNA sequenceを用いた包括的解析から対象を絞り込むことも検討している。また温度変化は細胞内代謝に大きく影響するため、申請者は、寒冷暴露により免疫細胞機能変化が生じる場合、細胞内代謝の変化から誘導されている可能性が高いと考えている。したがって寒冷暴露による代謝変化とその機能変化との関連性を、RNA sequenceを用いた網羅的な解析に加えて、細胞外フラックスアナライザーを用いた細胞内エネルギー代謝解析を行い、メカニズム解明に迫る予定としている。
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