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2022 Fiscal Year Annual Research Report

紛争後アフリカにおける平和の動態:平和構築の中で発揮される地域の主体性に着目して

Research Project

Project/Area Number 21J00875
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

川口 博子  大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2021-04-28 – 2024-03-31
Keywords刑事司法 / 葬儀 / 追悼 / 地域紛争 / 婚姻 / 賠償
Outline of Annual Research Achievements

2022年度においては、COVID-19による渡航制限や入国制限が緩和されたために、重点的にフィールドワークをおこなうとともに、研究課題に関連する論文を投稿し、また異なる分野の研究者とともに国際会議での報告をおこなった。
まず、ウガンダ北部において、国際刑事裁判所がアウトリーチ活動をおこなっている地域において、活動への参与観察をおこなった。そこでは、グローバルな被害者の概念が拡張されることによって、地域社会に暮らす多様で複雑な被害者がもつ加害者性が浮き彫りにされることが示唆された。また、国際刑事裁判所によって訴追された元反政府軍指導者の有罪が確定したことによって、2023年度には、地域住民に対する賠償のプロセスに関する研究をおこなうことができる。
くわえて、博士論文では、人びとが国際刑事裁判所と地域の慣習法をつかいわけて、紛争経験に対処してきたことを明らかにしたのだが、追加調査として紛争勃発以降の婚姻形態や慣習法による賠償財の運用の変遷、また葬儀における家族のコミットメントを明らかにし、論文を投稿した。こうした人びとの日常生活の動向は、研究課題である国際刑事裁判所の有効性を考えるうえで重要な観点である。
こうした現地の状況を、法学分野の研究者による国際会議において口頭発表をおこなった。また、戦争の影響をうけた人びとの日常生活の変容にも着目し、戦争時から現在にわたるまでの婚姻形態の変容や地域社会の慣習法に関する人びとの認識の移り変わりに関する論文が刊行された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究課題が遂行されるウガンダ北部では、1986年以降20年にわたって地域紛争が継続された。2000年代中盤にはいると、物理的な暴力はなくなり、国内避難民となった人びとは2010年には故地への帰還を終えたのである。そのご、移行期正義のとりくみがおこなわれてきたものの、とりわけ処罰や賠償といったものはなく、元反政府軍兵士の多くが重大な加害行為をおこなった者であれ、地域社会での生活を再開させていた。遅れること10年、国際刑事裁判所は、2015年に被告人の裁判をはじめ、地域社会でのアウトリーチ活動をおこない、2023年には被告人の有罪を確定した。本研究は、ここで生じるグローバルとローカルの齟齬を明らかにするとともに、国際刑事裁判所を介して人びとの生活に平和が生成される可能性をみいだすことにある。
すでに述べたように、2022年度においては、ウガンダ北部において2回(約4か月)フィールドワークをおこい、おもしろいデータを収集することができた。これまでのデータと合わせることで、2023年度においては国際学会での報告や国際誌への投稿の準備をすすめている。
とりわけ、国際法による「被害者」の拡張について、度国際刑事裁判所は、Trans-generation Harm(戦後に生まれた子供もまた、親をはじめとした家族などが戦争を経験したことで、負の影響をうけていること)という概念である。注目すべきは、特定の人びとがこのことばの説明を聞いたときに示した反応であり、とりわけ元反政府軍兵士は、彼らの子供が支援を受ける可能性よりも、子供に悪影響を与えるという自らの現在との齟齬を批判していた。このようなグローバルな概念とローカルな日常の差異がみられるなかで、人びとは国際刑事裁判所の活動をみずからの生活に適合させようとしているのである。

Strategy for Future Research Activity

2023年度は、特別研究員の任期の最終年度である。したがって、①フィールドワークの追加調査をおこなう、②これまでのデータを国際学会で報告・国際誌に投稿する、③2024年度以降に研究課題を継続するための研究費申請をおこなう、の三点を実施する。
①については、7月末から9月中旬をめどに、ウガンダ北部において30人を対象に国際刑事裁判所の活動に関する聞き取り調査をおこなう。
②では、IUAES(International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)において、Trans-generation Harmと元反政府軍兵士に関する研究報告をおこない、IARS(InternationalAssociation Reconciliation Studies)において、植民地支配と地域紛争の歴史的関係について報告をおこなう。IUAESには要旨を提出済みで、IARSではパネル代表者と打ち合わせ済みである。Journal of Internationl Criminal Justiceに共著論文を投稿するために準備中である。くわえて、Africaに博士論文での研究に本研究課題の成果をくわえて投稿する。さらに、書籍の分担執筆も担うことに決定している。
③においては、他分野横断型の共同研究プロジェクトとして、メンバーを募り申請書を執筆中である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 家族の葛藤からうまれる平和の生成2023

    • Author(s)
      川口博子
    • Journal Title

      スワヒリ&アフリカ研究

      Volume: 34 Pages: pp. 1-25

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 書評:松本尚之・佐川徹・石田慎一郎・大石高典・橋本栄莉編『アフリカで学ぶ文化人類学―民族誌がひらく世界―』、昭和堂、270頁、2019年2023

    • Author(s)
      川口博子
    • Journal Title

      アフリカ研究

      Volume: 102 Pages: pp. 35-37

  • [Book] 「「正しい法」の承認―外部からの介入が受容されるとき(コラム)」遠藤貢・坂本拓人(編)『シリーズ地域研究のすすめ ようこそアフリカ世界へ』2022

    • Author(s)
      川口博子
    • Total Pages
      261
    • Publisher
      昭和堂
    • ISBN
      978-4812221280

URL: 

Published: 2023-12-25  

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