2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J20215
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Research Fellow |
福永 耕人 大阪大学, 人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ現代史 / ドイツ連邦軍 / 制服を着た公民 / バウディッシン / シュネツ / 西ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦後のドイツ連邦軍(西ドイツ軍)で、ヒトラー暗殺未遂事件(7月20日事件)が顕彰され、肯定的に評価されていく過程においては、ヴォルフ・グラーフ・フォン・バウディッシンが、民主主義国家における「制服を着た公民」としての兵士という理念を提示することで、その思想的基盤を提供したとされる。そのため、バウディッシンの思想と、彼に反対するアルベルト・シュネツら保守派軍人たちの主張を史料から検討し、論争の具体的なポイントを整理して、バウディッシンの思想がどのように形成され、またどのように軍内で受容されたのかを辿ることが、研究上の重要な課題となった。 2022年度も引き続き、両者の間で交わされた議論について考察した。史料としては、前年度に入手可能であることを突き止めた、雑誌Alte Kameraden等を用いた。しかし、検討を進める中で、上記の課題を追求するためには、ただ軍内の二つの派閥の動きを追うのみでは不十分であり、68年運動に代表される、1960年代から70年代にかけての西ドイツの社会情勢等も、視野に入れる必要があることが判明した。このような新たな領域での調査をまずは行う必要が生じたため、2022年度の後期に予定していたドイツ現地での史料収集は延期した。また、それに伴って研究費の一部について、翌年度への繰り越しを申請した。 10月には「広島史学研究会大会」においてオンラインで研究報告を行った。本大会では、ドイツ史にとどまらない幅広い分野の研究者より、指摘や助言を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を遂行していく中で、当初は想定していなかった68年運動を始めとする、軍隊外の西ドイツの社会情勢について、新たに検討する必要が生じた。この課題を整理することなしには、必要な史料が何かを特定することはできず、現地での史料調査も不可能であることから、本年度のドイツへの渡航計画は延期せざるを得なくなった。このことが研究の進捗が遅れた最大の原因であった。
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Strategy for Future Research Activity |
優先するべき課題としては、上記の通り、西ドイツ社会の情勢変化について研究状況を整理し、それによって得た知見を研究に反映させることがある。またその結果に基づき、延期したドイツ現地での史料調査を実施する。 来年度も機会を得て学会等での報告を行い、他の研究者よりレスポンスを受け、研究をより洗練された物とする。そして、その成果は学会誌へ論文として投稿する計画である。投稿先としては、『パブリック・ヒストリー』を念頭に置いている。
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