2022 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代イタリアの宮廷祝祭における音楽の役割と権力表象
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21J20217
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小松 啓子 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 演劇的騎馬試合 / 初期近代 / 祝祭 / アルフォンソ二世・デステ / エステ家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、フェラーラおよびモデナ・レッジオ公であったアルフォンソ二世・デステが在位中に催した演劇的騎馬試合の研究を進めると同時に、同時代に他国で行われた類似の催しについて調査し、互いに与えた影響関係についても研究を行った。 アルフォンソ二世をはじめとするフェラーラの宮廷人たちは、文学や他国の祝祭など、さまざまな物事から、自分たちが催す演劇的騎馬試合という形式の着想を得た。そのなかでも特に、フランス王の宮廷で催された祝祭は、形式の点でフェラーラの事例に大きな影響を与えたと考えられる。また、エステ家の宮廷で活躍していたアリオストの叙事詩『狂えるオルランド』を典拠として作り上げている部分もあり、この作品も演劇的騎馬試合の着想源となっている。以上の研究結果を、2022年7月に刊行された学術誌『Arts&Mrdia vol.12』に「フェラーラ公アルフォンソ二世の宮廷における演劇的騎馬試合――祝祭にみる初期近代の発想」として発表した。 さらに、フェラーラの演劇的騎馬試合について、当時出版された上演の記録について、音楽と関連のある記述を調べ、演劇的騎馬試合の上演を重ねるにしたがって音楽が中心的な役割を果たすようになり、音楽劇ともいえる催しになっていることを明らかにした。これについては、7月にスウェーデンのウプサラで開催された第50回 Medieval and Renaissance International Music Conferenceにおいて発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度前半までは、新型コロナウイルス感染症の影響で海外に渡航しての資料調査を行うことができず、研究が予定よりもやや遅れていたが、その間にオンラインで閲覧可能な資料の分析を進め、さらに、2023年の1月から3月にかけてはイタリアのモデナおよびフェラーラに渡航して、現地の国立文書館や図書館で一次資料の閲覧を行うことができた。 これにより、アルフォンソ二世・デステの宮廷でおこなわれた演劇的騎馬試合をはじめとする祝祭に関する多くの資料を入手できた。現在はその読解および分析を進めており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年1月から3月にかけてイタリアに渡航しておこなった調査の成果として持ち帰った資料の読解および分析を進め、アルフォンソ二世・デステが支配していたフェラーラの宮廷で催された演劇的騎馬試合の成立と発展の過程を明らかにすることを目指す。同時に、実際の上演に携わった音楽家や芸術家の同定を進める。 また、2023年度中に、もう一度イタリアのモデナにある国立文書館での資料調査をおこなう。今回は、2022年度の調査では閲覧できなかった、フェラーラから他のヨーロッパ諸国へ大使として派遣されていた宮廷人たちがアルフォンソ二世に宛てた手紙を閲覧し、分析して、フェラーラの演劇的騎馬試合が他国の祝祭から受けた影響を明らかにすることを目指す。
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