2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ2099
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤岡 禎司 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | Riemann多様体 / 断面曲率 / Gromov-Hausdorff収束 / 崩壊 / Alexandrov空間 / GCBA空間 / extremal subset / stratification |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主な研究成果は以下の通りである。 1. 断面曲率の上界をもつRiemann多様体の研究:断面曲率の上界、単射半径の下界、体積の上界をもつRiemann多様体の全スカラー曲率が一様有界であることを証明した。これはPetrunin(2008)による断面曲率の下界と直径の上界をもつRiemann多様体に対する結果のアナロジーである。証明もある程度まで並行的で、Riemann多様体の収束理論と極限空間―Alexandrov空間およびGCBA空間―の幾何学を用いる。本課題の二大テーマである“収束理論”と“曲率の上界と下界の双対性”の研究が実を結んだ結果と言える。論文はPetruninの元の論文と同じ学術誌に掲載された。 2. Alexandrov空間の特異構造の研究:Alexandrov空間がSiebenmannの意味の“CS集合”であることを示した。これまでの文献ではより弱い“WCS集合”であることしか明示されていなかった。証明は新たな幾何学的道具は必要としないが、崩壊の極限空間として現れるAlexandrov空間の特異構造の精確な理解を深めることは重要である(実際崩壊に関する予想を多数発表しているSemyon Alesker氏による質問が契機)。論文は現在執筆中である。 3. 昨年度までの結果の論文執筆・投稿:昨年度に得ていた三つの結果(崩壊Alexandrov空間のEuler標数・GCBA空間のextremal subset・非崩壊Alexandrov空間の定量的Lipschitzホモトピー収束)を論文として完成させ、学術誌に投稿した。前者二つは受理・掲載され、三つ目は現在査読中である。なお三つ目は三石史人氏・山口孝男氏との共同研究である。 研究発表については、特に中国・桂林での国際学会やペンシルベニア州立大学のオンラインセミナーで1に関する講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
何よりもまず、断面曲率の上界をもつRiemann多様体の全スカラー曲率の一様評価という顕著な結果が得られたことが大きい。特にその証明は本課題の二大テーマである“収束理論”と“曲率の上界と下界の双対性”の研究を最大限に活用したものである。さらにこの問題に取り組む中で理解を深めたアニュラス被覆による手法は、断面曲率の下界をもつRiemann多様体の崩壊理論においても大いに役立つものであり、複数の方向性での展望が開けた。このように今後の可能性を広げる著しい結果が得られたため、研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはAlexandrov空間のCS構造に関する論文の執筆を行う。その上で、断面曲率の上界をもつRiemann多様体の全スカラー曲率の一様有界性の発展形として、そのような多様体の収束列に対する全スカラー曲率の収束定理を証明する。これは断面曲率の下界の文脈ですでにLebedeva-Petrunin(2022)の結果があるので実現可能性が高い。また一様有界性の証明において理解を深めたアニュラス被覆の手法がAlexandrov空間のEuclid空間へのbi-Lipschitz埋め込み問題に応用できると考えている。さらに、Alesker(2018)による崩壊するRiemann多様体のintrinsic volumeの一様有界性予想の証明の方向性を探る。その他、幾何トポロジーの専門家であるShijie Gu氏との共同研究として、Alexandrov空間やGCBA空間、可能であればより一般のBusemann空間の幾何構造と位相構造の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2023年10月より大阪大学の雇用PDとなり、PD等雇用支援事業によるスタートアップ経費および通勤手当等残額(計約50万円)が給付され、そちらを優先的に使用したため。したがって次年度は基本的には従来の研究計画通り進める。つまり繰越分は物品・旅費・その他経費に従来と同じ比率で用いる予定である。
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