2022 Fiscal Year Annual Research Report
プラットフォーム規制に関する日米比較-プラットフォーム事業者の表現の自由を焦点に
Project/Area Number |
22J10422
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上本 翔大 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / 表現の自由 / デジタル・プラットフォーム / アメリカ / コンテンツ・モデレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、アメリカの判例および学説を分析し、プラットフォーム事業者(以下、PF事業者)による恣意的なコンテンツ・モデレーションをどのように規律するか(≒コンテンツ・モデレーションに対するどのような規制が合憲で、どのような規制が違憲か)という点について検討を深めた。 アメリカでは、PF事業者をステイト・アクターとみなして規制を検討する立場、コモン・キャリアとみなして規制を検討する立場、PF事業者によるコンテンツ・モデレーションを尊重しつつ、その規律を試みる立場が見られることが明らかになった。それらを分析し、各見解の長短および憲法適合性を明らかにした。 それによれば、ステイト・アクターとしての規制やコモン・キャリアとしての規制を憲法上ただちに正当化することは困難であるし、政策上も望ましくない。そして、憲法学的な観点からすれば、内容規制(政治的表現に対するモデレーションを禁止する等)は違憲となる可能性が高いが、透明性を求める規制(モデレーション・ポリシーの開示等)は内容中立規制であるため違憲となる可能性が低下する。ただし、透明性を求める規制がPF事業者の表現に萎縮効果を生じさせるほどに遵守が困難な場合には違憲となるおそれがある。規制を遵守する各事業者の能力は異なるため、事業者の規模に応じた柔軟な規制が求められる。 以上の研究成果に基づいて、情報法制学会「第6回研究大会」(2022年12月11日)で口頭報告を行った。加えて、今年度は、検索事業者の表現の自由に関する論稿(阪大法学71巻6号249頁以下、72巻1号183頁以下)を公表した(これは、本科研費を受給する以前からの研究成果であるため、本科研費による直接的な成果ではないが、実質的には本研究と密接に関係するものである)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、2022年度はアメリカ法の概要を把握する作業を遂行し、当初の予定を概ね達成できたという点で、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、2023年度においても、PF事業者によるコンテンツ・モデレーションと表現の自由をめぐる議論について、アメリカ法を参照しつつ、さらなる検討を行う。その際には、判例および学説の中では明確に語られていない議論の背景―特に、アメリカ固有の表現の自由観―を踏まえた分析を行うことに留意する。そして、アメリカ法の議論を日本法の文脈でどのように援用できるか(あるいは援用できないか)についての考察を進める。 2023年度は、PF事業者によるコンテンツ・モデレーションのあり方に応じて類型ごとに整理し、検討を深める予定であったが、以下のように計画を修正する予定である。現代社会において、情報空間を設計・運営する主要なアクターは、マス・メディアおよびプラットフォーム事業者である。そこで、プラットフォーム事業者(デジタル情報空間)およびマス・メディアの双方の固有の意義を調和させながら、健全な情報空間を維持するためにはどのようにすれば良いのかという点について分析を進める。
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