2022 Fiscal Year Annual Research Report
Electrochemical sugar synthesis from carbon dioxide
Project/Area Number |
22J10537
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田畑 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / CO2資源化 / ホルモース反応 / アルドール反応 / DFT計算 / 化学反応ネットワーク / 自己触媒反応サイクル / システムケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素循環型社会の実現に向けて、CO2資源化技術の開発は喫緊の課題である。資源化の方法としては光や熱を駆動力とした触媒反応、光合成生物の活用など様々なものが挙げられるが、高速かつ低コスト(常温・常圧下)で反応の進行が可能なCO2の電解還元は、その有力な手段の一つとして幅広く研究が行われている。しかし、現状のCO2電解還元で主に得られるのはCOやメタンといった単純なC1~C2化合物(燃料)に限られていた。そこで本研究では、高付加価値で複雑な有機物である糖を、CO2を原料として化学的に合成すること目的とした研究に取り組んだ。 CO2からの糖の化学合成は、CO2の電解還元によってホルムアルデヒド(HCHO)を得る反応と、HCHOを基質とする連鎖的なアルドール反応によって糖を合成する化学反応ネットワーク(ホルモース反応)とを統合することで達成される。今年度は特に、後者にあたるホルモース反応の触媒開発に注力した研究を行ってきた。その中で申請者は、タングステン酸ナトリウムやモリブデン酸ナトリウムといった金属オキソ酸塩を触媒として用いた場合に、糖の合成反応が中性条件下で進行することを見出した。また反応機構に関し、ルイス酸と弱ブレンステッド塩基対が協奏的に働くことで反応の進行が促進されていることを、第一原理計算によって明らかにした。さらに、中性条件下での反応進行により、カニッツァロ反応等の副反応による糖の分解が抑制され、従来の塩基性触媒より高選択的に糖生成物が得られることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホルモース反応を進行させる触媒は過去多く報告されているものの、それらは例外なく強塩基触媒であった。強塩基触媒は反応を速やかに進行させる一方で、カニッツァロ反応や糖の酸化分解といった副反応も同時に触媒してしまうことから、糖選択性の低下が不可抗力的に生じていた。今回、ルイス酸と弱ブレンステッド塩基対が協奏的な役割を果たすことにより、温和な中性条件下で反応が進行することが初めて明らかとなった。したがってこの発見が突破口となり、ホルモース反応の選択性が触媒開発によって更に改善されることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCO2の還元反応によるHCHO生成とホルモース反応との統合により、CO2を原料とした糖の化学合成の達成を目指す。その過程で重要となるのは、CO2還元、ホルモース反応それぞれの選択性向上、およびそれらが統合された時に生じる新たな問題の解決である。統合された時に生じる問題としては、電位の印加によるホルモース反応生成物の分解等が挙げられ、分解物を網羅的に解析可能なガスクロマトグラフ質量分析系の構築を試みている。
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Research Products
(10 results)