2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J10747
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
JIA YUXIANG 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | デンプン / 海洋プラスチックごみ問題 / 刺激応答性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の生分解性プラスチックは生産量が低く、高価格だけでなく、海洋環境での生分解が遅く、分解過程で海洋生物に対する悪影響を及ぼすと指摘されている。一方、デンプンは安価かつ海洋分解性を有する高分子素材であるため、海洋生態系に優しいプラスチック素材の原料として注目されている。本研究では、日常生活の使用範囲内では耐水性を有しており、海水中では迅速に軟化・崩壊し、完全に生分解される前に海洋生物誤摂取による危険性を軽減するデンプンフィルムの開発を目指した。このデザインにより、優れた機械特性を実現しながらプラスチックフィルムの海洋への流出による海洋ごみ問題を解消する。 日常生活での水はほとんど真水である一方、海水は真水に比べてpH、イオン強度が高い。そのため、pHとイオン強度を外部刺激として、架橋崩壊を誘起し、架橋フィルムを崩壊させるトリガーとして用いることができると着想した。本研究では、日常生活の使用範囲内では架橋の保持により耐水性を有し、海水中では脱架橋によりフィルムが軟化あるいは溶解、崩壊を誘発するデンプンフィルムを創製する。 本年度では、高pHで崩壊する水素結合を海水応答性架橋結合として用いて、海水に崩壊する水素結合架橋デンプンベースフィルムを作製した。タピオカデンプンに水素結合供与体ポリ(アクリル酸)を導入し、作製した変性澱粉と水素結合受容体ポリ(ビニルピロリドン)を混合して溶液キャスティング法で混合フィルムを作製した。作成したフィルムは純水中で溶解しなかったのに対して、人工海水中では迅速に溶解した。また、高イオン強度で崩壊するイオン結合を海水応答性架橋結合としての応用も初歩に検討した。本研究の成果は、適切な材料の組合せ・架橋による多糖類を基盤とする海洋生分解性プラスチックの開発の土台になり、海洋生分解性プラスチックの普及に貢献できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日常生活の使用範囲内では架橋の保持により耐水性を有し、海水中では脱架橋によりフィルムが軟化あるいは溶解、崩壊を誘発するデンプンフィルムを創製する。そこで、本年度では、高pHで崩壊する水素結合を海水応答性架橋結合として用いて、海水pHに崩壊する水素結合架橋デンプンベースフィルムを作製した一方、高イオン強度で崩壊するイオン結合を海水応答性架橋結合としての応用も初歩に検討した。段階的な成果は学会で発表した一方、論文としてもまとめた。そのため、本研究課題の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、今年度の予備検討の結果を踏まえて、イオン結合を海水応答性架橋結合として応用する可能性を更なる検討する。また、セルロースナノファイバなど海洋生分解性を有し、かつ高強度なナノフィラーを架橋ネットワークに組み込みことで、フィルムの機械特性を更なる向上する。
|