2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J11611
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷川 耀 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 固有とは限らない双曲的測地空間 / Gromov 境界 / (擬)測地境界 / (擬)エンドの空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
固有な双曲的測地空間において知られている Gromov 境界とエンドの空間の間の関係性を固有でない場合に拡張することを考察した. 具体的には, 固有な双曲的測地空間の Gromov 境界は測地境界と考えることができ, 定理1: 固有な双曲的測地空間において, 測地境界からエンドの空間への自然な写像が連続かつ全射で, 各エンドのファイバーが測地境界の連結成分になる という事実が知られているので, 考える空間が固有でない場合にも類似の結果が成り立つのではないかと考えた. 固有とは限らない双曲的測地空間の Gromov 境界は測地境界とは同相でなく, 擬測地境界と同相であることが筆者によって示されているので, 固有とは限らない双曲的測地空間を考える場合には定理1における測地境界は擬測地境界に置き換える必要がある. その際, 擬測地境界からエンドの空間への自然な写像は定義できないため, エンドの空間の概念を緩め, 擬エンドの空間という概念を導入することを検討している. そうすることにより, 定理1の類似物として, 予想1: (固有とは限らない)双曲的測地空間において, 擬測地境界から擬エンドの空間への自然な写像が連続かつ全射で, 各擬エンドのファイバーが擬測地境界の連結成分になる という結果が成り立つのではないかという着想が得られる. いまのところ, 順極限を用いることで擬エンドの空間が上手く定義でき, 予想1における写像が well-defined かつ連続であることは確かめることができている. 苦戦をしているのが「全射性」と「各擬エンドのファイバーが擬測地境界の連結成分になる」という部分であり, 両者は「適切な擬測地半直線の構成」の問題に帰着できるので, そこを突破できればという状況である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予想している「(固有とは限らない)双曲的測地空間において, 擬測地境界から擬エンドの空間への自然な写像が連続かつ全射で, 各擬エンドのファイバーが擬測地境界の連結成分になる」という問題に対して肯定的にも否定的にも解決がいまだにできていない. 残す未解決部分は全射性とファイバーに関する部分であるが, どちらも適切な擬測地半直線の構成が上手くできれば肯定的に解決されることまではわかった. さらに, 双曲的測地空間において無限遠に収束する点列から擬測地半直線を構成できることは既に示してあるので, 無限遠に収束する点列の存在を調べるという方針で現在取り組んでいる. これが上手くいけば研究が加速するが, 保証はできず進捗状況は遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは, 固有な双曲的測地空間における Gromov 境界とエンドの空間の関係を, 固有とは限らない双曲的測地空間の場合に適切に拡張できないか調べる. その次に, Cordes によって導入された測地空間の“無限遠”の概念の一つである Morse 境界と Gromov 境界の間の関係性を双曲的測地空間が固有でない場合に考察する. 二つ目の課題に関しては派生する課題も多いと考えられ, 適宜研究を進めたい. また, 固有とは限らない双曲的測地空間に対して示せた事実を幾何学的群論の観点に基づいて応用できないか考えていきたい.
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