2022 Fiscal Year Annual Research Report
憲法上の婚姻の意味変化に関する研究―ドイツ基本法6条1項の婚姻を題材に
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22J12359
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇多 鼓次朗 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / 解釈 / 概念 / 家族 / 婚姻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は憲法上の婚姻概念の解釈が変化することが、如何なる場合に、如何なる限度で許容或いは要請されるのかを明らかにすることを目的とし、ドイツ基本法6条1項における婚姻概念についての解釈に見られる変化を、同条項における家族概念についてのそれと対比しながら検討するものである。 本年度は、婚姻概念に比してより柔軟な変化の様相を呈する家族概念について、基本法制定以来の連邦憲法裁判所判例及び国法学説を整序・検討し、同概念に含まれると解される共同体の範囲が基本法制定当初に比して今日では拡大していることを確認した。即ち、基本法制定当初は「両親と子どもからなる共同体」という定式のもとに父母とその子どもを念頭において理解されていた家族概念が、連邦憲法裁判所判例及び国法学説における包摂の蓄積の中で、現在では、従来想定されていなかった「同性の両親とその子どもからなる共同体」や、「両親と子どもからなる共同体」には当たらない「祖父母と孫からなる共同体」も含むように拡大していることを確認した。そのうえで、そのような解釈の展開が「子に対する責任の引き受け」という機能を果たす共同体を家族とみなす一貫した思考に沿って展開してきたものであること、また、この一貫した思考が、子の福祉に関する基本法6条2項以下の規定との連関で、体系的解釈によって支えられたものであることを明らかにした。 以上の研究成果について大阪公法研究会において報告した。 また、婚姻と事実婚との別異取扱いの基本法適合性をめぐる連邦憲法裁判所決定についての判例評釈を紀要『阪大法学』にて公表した。同稿では、近時の連邦憲法裁判所判例においても基本法上の家族が社会的家族として把握されていること、またそのような解釈の基礎にある子の福祉や子の実体的権利利益への考慮が、両親の婚姻関係の有無に基づく子の別異取扱いに対する平等審査の中でも重視されていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ連邦憲法裁判所判例及び国法学説における家族概念・婚姻概念の解釈に関する分析について、おおむね遅滞なく進んでいる。成果については、一本の判例評釈を公表するとともに、一本の研究報告を行った。また、研究報告における質疑、批評を受けて、論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、現在執筆中の論説において家族概念解釈の変化について検討した本年度の研究成果を公表する。 第二に、本年度の研究によって得られた家族概念解釈の変化の動態及び構造を踏まえて、ドイツ連邦憲法裁判所判例及び国法学説における基本法6条1項の婚姻概念解釈の展開を検討する。 第三に、ドイツにおける婚姻概念解釈の展開が日本国憲法24条解釈に与える示唆を検討する。
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Research Products
(2 results)