2023 Fiscal Year Annual Research Report
憲法上の婚姻の意味変化に関する研究―ドイツ基本法6条1項の婚姻を題材に
Project/Area Number |
22KJ2150
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇多 鼓次朗 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法上の概念の意味変化 / 夫婦概念 / 婚姻概念 / 家族概念 / 機能的解釈 / 相互の援助・扶助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず昨年度までの研究成果として、家族概念解釈の展開に見られた同概念の変化の様相を紀要『阪大法学』にて公表した。同稿では、ドイツ連邦憲法裁判所判例及び国法学説において、家族概念に含まれる共同体の範囲が、解釈論の展開の中で「家族の果たす機能」に着目することによって拡大してきたことを示した。 さらに、同稿の内容を踏まえて、基本法6条1項の婚姻・夫婦(Ehe)概念の解釈論の展開を検討した。まず、基本法上の婚姻・夫婦概念のメルクマールとされてきた両当事者の異性性(両当事者が異性であること)が今なお同概念のメルクマールとして堅持されているかという論点に関する近時のドイツ国法学の議論状況を整理した。さらに、異性性がもはや同概念のメルクマールではないとする学説の背後には、同性婚導入以前の同性登録生活パートナーシップの保護と婚姻の保護との平等化傾向とともに、「相互の援助・責任」という夫婦共同体が果たす(べき)機能を重視する思考があったことを示した。これによって、基本法6条1項に規定されている婚姻・夫婦と家族という二つの概念について、それぞれの外延の拡大が生じた、或いは主張されている背景には、それぞれの共同体の果たす(べき)機能を重視する思考があるという共通性を明らかにした。但し、婚姻・夫婦概念については、そのような解釈に反対する主張も学説において依然として根強くあるという点、さらに、そもそも同概念に関しては、解釈論の展開の中で、異性性のほかに原則的非解消性(夫婦共同体が原則として生涯にわたるものであること)等のメルクマールが示され、そのようなメルクマールに関しては、表現に変化はみられるものの、本質において堅持されてきたという点で、家族概念解釈の展開とは異なる様相を呈している、ということを明らかにした。以上の研究成果について、関西憲法判例研究会において報告した。
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Research Products
(3 results)