2023 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路トレーシングと遺伝子発現解析によるクロザピンの治療メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ2157
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平戸 祐充 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 統合失調症 / クロザピン / 神経回路 / 治療メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症に対するクロザピンの薬物治療メカニズムには現在も不明な点が多い。クロザピンが標的とする複数種類の受容体は、いずれも脳の広範な領域に発現し、各受容体の間で発現部位や細胞種、発現量が異なるため、受容体に対する薬物の親和性などの情報のみでは薬効に関わる細胞や神経回路レベルのメカニズムを理解することは困難である。本研究では、クロザピンにより神経活動が変化する細胞・神経回路を特定し、その細胞・神経回路の機能と、薬物による行動変化の関係を解明することを目的としている。 本年度は、クロザピンにより活性化する内側前頭前皮質(mPFC)の細胞の神経投射パターンの詳細を検討した。上記細胞の軸索投射画像について、標的脳領域での軸索の蛍光輝度を指標とした定量的解析を昨年度に実施したが、今回の実験条件では、脳領域間で輝度と、蛍光標識された軸索線維の密度は非線形の関係にあり、必ずしも輝度が神経投射の量を反映しないことがわかった。そこで、バックグラウンドに対して一定の輝度以上で標識された軸索線維を定量し、標的脳領域での軸索密度を指標として解析した。その結果、クロザピンにより、視床背内側核(MD)において、軸索密度が溶媒投与群よりも有意に高くなった。次に、軸索終末から細胞体を蛍光標識できる逆行性蛍光色素を用いて、MDに投射するmPFC神経細胞を標識し、当該細胞集団におけるクロザピンによるc-Fos発現解析を実施した。その結果、クロザピンにより、MDに投射するmPFC神経細胞においてc-Fos発現細胞が増加し、前述の全脳レベルの解析を支持する結果が得られた。また、MDに投射するmPFC神経細胞のうち、c-Fosを発現していた細胞は約6.2%であった。以上より、mPFCの中でもMDに投射する一部の細胞集団の活性化が、クロザピンの作用機序に関与する可能性が示された。
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