2022 Fiscal Year Annual Research Report
神経系ヒストンバリアントによる寿命延長メカニズムの解明
Project/Area Number |
22J13562
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 達也 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 線虫 / 老化 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C. elegansなどのモデル生物を用いた解析によって、生物の老化・寿命は積極的に制御された生命現象の一つであることが分かりつつあり、これまでにインスリン/IGF-1シグナルや生殖細胞除去など、進化的に保存された寿命延長経路が複数同定されてきた。我々は最近、特定の転写因子複合体がこれらの経路で活性化し、寿命延長に寄与していることを見出した。近年の老化研究では、特定の臓器や組織が、いわば高次のコントロールセンターとして全身の老化・寿命を制御していることが明らかにされつつある。我々が着目する転写因子複合体は長寿個体において全身レベルで活性化されるが、どの組織における本転写因子複合体の機能が寿命延長に重要なのかはわかっていない。我々はこれまでに、RNAiを用いた組織特異的な解析により、神経系における本転写因子複合体が線虫の老化・寿命を制御していることを見出している。しかしながら、このメカニズムの詳細は未解明であり、本研究では、この神経系による寿命制御メカニズムの解明に挑戦した。神経系で特異的に本転写因子複合体を抑制した個体のトランスクリプトーム解析を実施し、生存率を指標としたRNAiスクリーニングから、下流で寿命延長に寄与する2つの新規寿命制御因子を同定した。さらに、これら因子のトランスジェニック線虫を作成し、機能解析を進めることで、1つは神経で、もう1つは神経以外の組織で寿命延長に寄与することを見出した。興味深いことに、これらの因子は同一のシグナルカスケードで機能していることが分かり、これは神経系を起点とした組織間コミュニケーションによる新たな寿命制御メカニズムが存在することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経系での本転写因子複合体の下流で働く候補因子をRNA-seq解析によって得た。また、これら候補因子をノックダウン後、寿命を指標としたスクリーニングを実施し、下流で働く2つの新規寿命制御因子を同定した。RNAiやトランスジェニック線虫を用いて寿命制御におけるこれらの作用機序解明から、神経系を起点としてnon cell-autonomousに働く新たな寿命制御シグナルカスケードを見出した (論文投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経からnon cell-autonomousな寿命制御シグナルに介在する液性因子の同定に取り組み、これがどのように全身の老化を制御しうるのかを明らかにしてゆく。
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