2023 Fiscal Year Annual Research Report
神経系ヒストンバリアントによる寿命延長メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ2165
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 達也 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 老化 / 寿命 / 線虫 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C. elegansなどのモデル生物を用いた解析により、生物の老化・寿命は積極的に制御された生命現象の一つであることが分かりつつあり、これまでにインスリン/IGF-1シグナルや生殖細胞除去など、進化的に保存された寿命延長経路が複数明らかにされてきた。転写因子MML-1/MXL-2複合体はこれらの経路で共通して必須であり、寿命制御の鍵となりうることが最近明らかになってきた。長寿個体においてMML-1/MXL-2は全身レベルで活性化され、オートファジーの活性化を介して寿命延長に寄与している。しかしながら、どの組織のMML-1/MXL-2の働きがどのように寿命制御に関与しているかは分かっていない。また、MML-1/MXL-2によるオートファジーの活性化、ならびに寿命の延伸がどのような下流メカニズムを介しているかも十分に理解されていなかった。そこで、本研究ではMML-1/MXL-2が寿命制御に寄与する重要組織を特定し、その下流メカニズムを明らかにすることを目的とした。 まず我々は、線虫を用いたMML-1/MXL-2の組織特異的な解析を行い、神経系におけるMML-1/MXL-2の活性化が寿命延長に重要な働きを担うことを見出した。次に、この寿命制御の下流メカニズムを明らかにするために、神経特異的mml-1/mxl-2ノックダウン線虫のトランスクリプトーム解析を実施し、神経系MML-1/MXL-2がグルタミン酸トランスポーター(GLT-5)の転写制御を行うことで寿命延長に寄与していることを明らかにした。さらに、神経系MML-1/MXL-2-GLT-5軸が遠位組織のオートファジーやペルオキシダーゼMLT-7の活性を制御することにより寿命延長に寄与していることを明らかにした。これらの結果から、神経系MML-1/MXL-2を起点として組織間コミュニケーションを介したオートファジー・寿命制御ネットワークが存在することが示唆された。
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