2022 Fiscal Year Annual Research Report
アポリポタンパク質及びOX40アゴニスト抗体を用いた新規免疫療法の開発
Project/Area Number |
22J15287
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石橋 亜衣里 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / ウイルス療法 / 生体内タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、不活性化ウイルスHVJ-EとT細胞活性化抗体であるOX40アゴニスト抗体の併用療法を更に発展させ、様々な癌種で全身の癌を排除することを目的としている。HVJ-Eは腫瘍内に投与することによって、単剤では投与部位のみに抗腫瘍効果を発揮する。申請者らはこれまでにHVJ-EとOX40アゴニスト抗体を併用することで、投与部位に対する腫瘍細胞殺傷効果に加え免疫細胞による全身性の抗腫瘍効果がもたらされることを明らかにしてきた。しかしHVJ-E不応の癌も存在し、そのような癌種では併用療法も奏功しない。また、HVJ-Eは血球凝集作用を有するため静脈内投与が出来ず、適応癌種が表在性の癌に限られる。本研究では、HVJ-Eの抗腫瘍メカニズムを検証することで明らかとなった生体内物質アポリポタンパク質に注目し、アポリポタンパク質とOX-40アゴニスト抗体の併用により、様々なタイプの癌に適応可能な免疫療法を提案することを目指す。今年度行った担癌マウスでの検討により、アポリポタンパク質の一つであるApoDがHVJ-E不応の癌に対しても抗腫瘍効果を持つことが明らかになった。また、B16F10メラノーマ細胞を静脈内投与し作製したマウス肺転移モデルを用いて、ApoDの単剤での全身での抗腫瘍効果を確認した。その結果、ApoD静脈内投与群において一定の腫瘍縮小効果を得た。また、ApoDとOX40アゴニスト抗体併用療法では、HVJ-EとOX40アゴニスト抗体併用療法と同程度の腫瘍縮小効果が認められた。加えて、HVJ-EとOX40アゴニスト抗体併用療法と比較して、より多くの免疫細胞の浸潤し、より強力に活性化していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度行った担癌マウスでの検討により、アポリポタンパク質の一つであるApoDがHVJ-E不応の癌に対しても抗腫瘍効果を持つことが明らかになった。また、B16F10メラノーマ細胞を静脈内投与し作製したマウス肺転移モデルを用いて、ApoDの単剤での全身での抗腫瘍効果を確認した。その結果、ApoD静脈内投与群において一定の腫瘍縮小効果を得た。また、ApoDとOX40アゴニスト抗体併用療法では、HVJ-EとOX40アゴニスト抗体併用療法と同程度の腫瘍縮小効果が認められた。加えて、HVJ-EとOX40アゴニスト抗体併用療法と比較して、より多くの免疫細胞の浸潤し、より強力に活性化していることが明らかとなった。また、腫瘍内免疫細胞のRNA-seq及びTCR-seqの結果から、併用療法によって当初より腫瘍内に存在していた腫瘍を認識できるTCRを持つ免疫細胞が活性化し増殖することが明らかとなった。また、アポリポタンパク質の腫瘍内投与により腫瘍ではMHC-Class1.2及びNKG2Dリガンドの発現が上昇していた。更に、併用療法により活性化した腫瘍内CD4陽性T細胞はNKG2Dを高発現していた。以上の結果より、併用療法によって腫瘍側が免疫細胞に認識されやすくなること、更に腫瘍内T細胞側がTCR認識に加えNKG2D-NKG2DLによる腫瘍認識を活性化させること、この二点により腫瘍細胞に対する自己非自己の認識が変わり、腫瘍内免疫細胞が腫瘍殺傷効果を示すようになることが強く示唆された。これらの結果をまとめて論文投稿作業を行った。現在は、Nature Communicationsに投稿しリバイス対応を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究者は今年度で学位を取得した為、来年度はPDへと切り替えを行う。PD切り替えと同時に、本大学医学系研究科竹田潔教授に受け入れ研究者を変更する。竹田研究室では古くから免疫学に関する研究を行っており、竹田研究室で本研究を継続することにより、腫瘍免疫への理解をさらに深める予定である。リバイスの中にも免疫系に関する追実験が含まれており、アポリポタンパク質の腫瘍内投与により腫瘍が認識されやすくなる理由等を検討する予定である。
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