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2022 Fiscal Year Annual Research Report

人工的な素励起生成による原子層薄膜の量子多体制御の研究

Research Project

Project/Area Number 22J20076
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

藤原 浩司  大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2022-04-22 – 2025-03-31
Keywords表面弾性波 / 電荷密度波 / 原子層物質
Outline of Annual Research Achievements

表面弾性波とは、固体表面を歪みの波が伝わる現象であり、圧電基板上に作製したくし形電極にMHz ~ GHz帯域の交流電場を印加することで励起できます。これによりナノスケールのデバイスにおいて、フォノンやマグノンを人工的に生成することができます。本研究では、フォノンやマグノンが関与する代表的な相転移現象である、超伝導・電荷密度波・磁性の3つの相転移現象を示すそれぞれの原子層薄膜に対し、表面弾性波によって人工的に生成された素励起を用いて、これらの多体効果を制御することを目指します。
電荷密度波(charge density wave: CDW)は電子密度が周期的に濃淡を持った状態で、電子格子相互作用が強い低次元導体において現れます。CDW状態の電子は結晶中の不純物などによってピン止めされて電気伝導に寄与しませんが、しきい値以上の電場を印加するとピン止めが外れてCDWの並進運動(スライディング)が起こり、電気抵抗の急激な減少が観測されます。
本年度は、代表的なCDW物質であるNbSe3において、CDWのダイナミクスを表面弾性波によって変調することを目指しました。GHz帯域の表面弾性波をNbSe3薄膜に照射し、NbSe3薄膜の微分抵抗を測定すると、スライディングが起こっている領域にピークが現れました。この現象はシャピロステップと呼ばれ、CDWに交流電場を加えたときに観測されることが知られています。本研究では表面弾性波の照射によってシャピロステップが観測されたものと考えられます。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は、CDW物質NbSe3の薄膜に表面弾性波を照射し、CDWのダイナミクスを変調することを目標としていましたが、計画通り表面弾性波照射下におけるNbSe3の電気伝導特性を調べることができました。その結果、CDW系におけるシャピロステップを表面弾性波の照射によって観測することができました。表面弾性波による歪みの効果を厳密に議論するためには、さらなる実験が必要ですが、CDWの伝導特性が表面弾性波によって変調されることを観測できたため、「おおむね順調に進展している」と評価しました。

Strategy for Future Research Activity

これまでに行った研究により、表面弾性波の照射によって電荷密度波(CDW)のダイナミクスが変調されることを示唆する結果を得ました。しかしこの結果は、交流電場下でのCDWの運動に現れる現象と類似しています。今後は、これらの結果の再現性を確認するとともに、対照実験を行うことで、交流電場と表面弾性波によるシャピロステップにどのような違いがあるのかを詳しく調べていきます。
さらに令和5年度は、表面弾性波を超伝導体に照射することによって、量子的な現象の観測を目指します。数GHzの表面弾性波(フォノン)は、温度に換算すると数百mKのエネルギーを持ちます。そこで本研究では、超伝導転移温度が約百mKのTaSe2やWTe2という物質に注目しました。希釈冷凍機の極低温環境(20 mK)で、6 GHzの表面弾性波を励起すれば、表面弾性波のエネルギーは超伝導ギャップの数倍程度の大きさになります。このような状況下では、量子的な現象の観測が期待できます。例えば近年、超伝導体NbNに超伝導ギャップと同程度のエネルギーを持つテラヘルツ光を照射すると、秩序パラメーターの振幅ゆらぎに対応するヒッグスモードとの共鳴が観測されました。本研究では、超伝導体TaSe2やWTe2の薄膜に表面弾性波を照射することで、ヒッグスモードとの共鳴を観測することを目指します。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 表面弾性波照射によるNbSe3薄膜のCDWダイナミクスの変調2022

    • Author(s)
      藤原浩司、中村瞭弥、渡邉杜、新見康洋
    • Organizer
      第28回渦糸物理ワークショップ

URL: 

Published: 2023-12-25  

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