2022 Fiscal Year Annual Research Report
魔法数をまたぐ領域での断面積測定による核半径異常増大現象のメカニズム解明
Project/Area Number |
22J20549
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福留 美樹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 中性子魔法数 / 中性子スキン / プラスチックシンチレーションカウンター / 時間分解能 / 光電子増倍管 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中性子魔法数82をまたぐSn同位体の核物質半径の測定・中性子スキン厚の導出を行うことである。実験は超中性子過剰核ビームの生成が世界で唯一可能である理研RIビームファクトリーで予定している。中性子スキン厚導出のために必要となる荷電半径は134Snまでしか測られていない。より詳細な議論のためにさらに中性子過剰な領域135-140Snでの荷電半径が必要とされるが、既存の方法では統計的困難がある。そこで新たな手法として、短時間で効率の良い測定ができる荷電変化断面積の測定に注目した。これを実現するために、申請者は超高時間分解能TOF(飛行時間)検出器を新たに開発した。 通常のプラスチックシンチレータとPMTの組み合わせでは100 ps程度の時間分解能が普通であるが、Z=50付近の原子番号ピークを分離するにはTOF検出器の時間分解能をさらに上げる必要があった。そのため、タイミング特性に優れているプラスチックシンチレータと高速PMT(光電子増倍管)から構成されるプラスチックシンチレーション検出器を作成し、系統的なビーム試験を量子医科学研究所のHIMACシンクロトロン加速器施設で行った。検出器はシンチレータの厚さやPMTの種類を変えて複数台作成し、どの組み合わせが最適かを求めた。をまた、PMTにかける電圧や生信号に対するディスクリミネーターの閾値などの最適条件も求めた。その結果、420 MeV/核子の132Xe 1次ビームに対して、時間分解能< 5 psというTOF検出器として世界最高の性能を達成し、従来に比べて20倍以上の改善に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は昨年度の秋にSn同位体チェーンについての中性子までを含めた核半径測定実験を、昨年度理化学研究所RIビームファクトリー実験施設において実行できる予定であったため、昨年度前期は実験準備に専念した。まず、実験で使用する予定の高速プラスチックシンチレーション検出器のプラスチックシンチレータの種類、厚さ、光電子増倍管の種類の最適な組み合わせと設定条件を求めるために、量子医科学研究所のHIMACシンクロトロン加速器施設で系統的なビーム試験を行った。 しかし、理研での実験が施設側の故障の問題で延期となったため、昨年度後期は並行して進めていたアイソマー状態の核半径測定に関する研究を精力的に行なった。同時に、理研での実験準備を再度見直し、Snの二次ビームの設定条件についてモンテカルロシミュレーションを用いてトランスミッションなどを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
理研での実験が今年度中にできるか不透明であるため、先行研究のCa同位体チェーンの核半径測定実験の際に同様に測定していたNi同位体チェーンのデータ解析を精力的に行うことを予定している。
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Research Products
(4 results)