2022 Fiscal Year Annual Research Report
梗塞後心筋組織に浸潤する新規ミエロイド系細胞の心筋リモデリングにおける意義解明
Project/Area Number |
22J22058
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨松 聖史 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 炎症反応 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋梗塞後心不全発症過程(心筋リモデリング)において、ミエロイド細胞による炎症反応が重要な役割を果たすことが知られている。一方で、炎症反応を標的とした治療法は存在しない。これは、ミエロイド細胞の多様性を十分に把握できていないことに起因すると考えられる。申請者はこれまでに、single cell RNA sequenceを行い、梗塞後浸潤ミエロイド細胞の多様性の解明を試みた。その過程で、これまで機能の報告のない細胞集団(Cluster X)が心筋組織内で認められることを明らかにした。本年度は、心筋リモデリングにおけるCluster Xの意義を明らかにするべく各種検討を行った。まず、フローサイトメーターを用いて、Cluster Xは梗塞後4日目に最も心筋組織で認められることを明らかにした。次に、Cluster Xの機能の詳細を明らかにすべく、Cluster Xで特異的な発現が確認できた分子であるGARPについて、ミエロイド細胞特異的欠損マウス(CKOマウス)を作製した。野生型及びCKOマウスの左前下行枝を結紮することで、心筋梗塞モデルを作製後経時的な心機能の評価を試みた。その結果、GARPを欠損させることにより、梗塞後の心機能低下・左室の拡張が抑制されることが明らかとなった。また、マッソントリクローム染色による組織学的検討からCKOマウスでは左心室壁の菲薄化が顕著に抑制されることが明らかとなった。以上のことよりCluster X心筋リモデリングにおいて、心傷害的な作用を有することが示唆された。次に、Cluster Xによる心傷害的作用のメカニズムを明らかにするために、GARP+ ミエロイド細胞を用いてbulk RNA sequenceを行った。sequenceの結果を基にしたGene Ontology解析によりCluster XはECM関連因子の発現が顕著であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ミエロイド細胞特異的GARP欠損マウスの心筋梗塞後に示す表現型について解析を行うことができた。野生型のマウスと比較して、心筋梗塞後に認められる心機能低下が抑制されることを明らかにした。また、マッソントリクローム染色による組織学的検討の結果より左室の線維化の進行についてもCKOマウスで抑制されることが明らかとなった。伊集の検討により、GARPの発現を特徴とするCluster Xは心筋リモデリングにおいて、心傷害的な作用を有することが示唆された。また、当初実施予定であった、GARP陽性ミエロイド細胞を用いたbulk RNA sequenceについても本年度実施することができた。DEG解析やpathway解析、GO解析の結果からもGARP陽性ミエロイド細胞はECMのリモデリングに大きく寄与しうることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、GARP欠損マウスにおいてみられた心筋梗塞後の新保護効果のメカニズムについて、その詳細を明らかにする。方法として、梗塞後の野生型及びCKOマウスの心筋組織内に浸潤した炎症細胞を単離し、single cell RNA sequenceを行う。scRNAseqでの解析により、心保護メカニズムを説明しうる仮説を立て、Dryな解析により、その詳細を明らかにする。
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