2023 Fiscal Year Research-status Report
梗塞後心筋組織に浸潤する新規ミエロイド系細胞の心筋リモデリングにおける意義解明
Project/Area Number |
22KJ2216
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨松 聖史 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 心筋炎症 / 心筋リモデリング / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の高齢化に伴い心不全患者が急増している。心筋梗塞(MI)は、心不全の主な発症原因でありMI後に発症する心不全は薬物治療に抵抗性を示すため、新たな治療法の開発が急務である。MI における炎症反応は、マクロファージや好中球などのミエロイド系の細胞が重要な役割を担うことが報告されている。これらのミエロイド細胞の心筋リモデリングにおける意義は、それらの表現型を炎症・抗炎症と二分することで説明されてきた。一方で、これまで炎症反応を直接の標的とした治療法の開発には至っていない。このことより、ミエロイド細胞の表現型をより詳細に理解することが心筋リモデリングにおける炎症制御機構の理解および新たな治療標的の探索につながると着想した。これまでの検討において、マクロファージや好中球などのいずれもの既存の細胞種に帰属されない細胞集団が存在することを見出しており、該当の細胞集団はGARPと呼ばれるタンパクの発現が顕著であることを明らかにしていた。また、ミエロイド細胞特異的にGARPを欠損させたマウス(CKOマウス)ではMI後の心傷害が抑制されることも明らかにしていた。このようなGARP陽性細胞集団の心傷害作用メカニズムを明らかにするために、野生型マウス及びCKOマウスの梗塞心よりミエロイド細胞を調製し単一細胞RNA sequence解析を行った。その結果、GARPの欠損はGARP陽性細胞集団自身への表現型には影響を及ぼさないことが明らかとなった。一方で、その他の細胞への影響を評価したところ、CKOマウスでは心筋細胞におけるapoptosisが抑制されていることが明らかとなった。以上より、GARP陽性細胞集団は心筋細胞に細胞死を誘導することによって、心傷害作用を発揮している可能性が示唆された。本研究より、GARP陽性細胞集団を標的とした新たな心不全治療薬の開発が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度予定していたように、本年度はGARP欠損による心保護効果のメカニズムを明らかにするために、単一細胞RNA sequenceによる解析を実施することができた。解析の結果、GARPの欠損は注目していた細胞集団の遺伝子発現パターンには大きな影響を及ぼさないことが明らかになった。一方で、その他の細胞種に着目した解析により、CKOマウスでは心筋細胞死が抑制されていることを明らかにした。また、受容体の阻害剤を用いた解析により、GARP陽性細胞集団による心筋細胞死はTGFβシグナルが重要な役割を果たすことを明らかにすることができた。加えて、本研究の臨床応用を展望した検討についても実施することができた。パブリックデータベースであるGEO(Gene Expression Omnibus)より、ヒトの急性腎障害患者の単一細胞RNA sequenceデータを取得し再解析を行った。その結果、実験動物のみならずヒトにおいてもGARP陽性細胞集団が存在することを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
GARP陽性細胞が辿る分化経路について明らかにする。様々な骨髄細胞種への分化能を有するHL60細胞に対して、薬理作用が明確にされている化合物ライブラリーにより刺激を行い、GARP陽性骨髄細胞へ分化誘導する物質の探索を行う。
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