2022 Fiscal Year Annual Research Report
単一細胞解析を用いた自閉症における社会性障害に関わる分子神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
22J22119
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北川 航平 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 疾患モデルマウス / 社会性 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(以下、自閉症)の主症状の一つとして社会性障害が挙げられるが、その分子病態には不明な点が多く残されている。脳はヘテロな細胞集団の集合体であり、自閉症の分子病態の解明には、特定の脳機能の発現に重要な少数細胞集団の特性を個別に理解することが重要である。当研究室では、独自に作成した自閉症モデルマウスであるPOGZ変異マウスを用いた全脳神経活動イメージング解析により、社会行動後に前帯状皮質領域のごく少数の神経細胞が過剰に活動していることを見出しており、この神経細胞集団と社会性障害との関連が示唆される。そこで本年度は、POGZ変異マウスの前帯状皮質において、社会行動時に活動している神経細胞の特性を明らかにすることを目的とした検討を実施し、主に以下の成果を得た。 ①DREADD法により、社会行動時に活性化する前帯状皮質神経細胞の活動を抑制したところ、野生型マウスでは社会性行動時間が有意に低下した一方で、POGZ変異マウスでは社会性行動時間に有意な変化が見られなかった。 ②活動神経細胞特異的に蛍光タンパク質を発現するArc-dVenusマウスを用いて、社会行動時に活動する前帯状皮質神経細胞をFACSにより分取し、RNAシーケンスを実施した。発現変動解析の結果、野生型マウスとPOGZ変異マウスとの間で、特定の神経細胞のマーカー遺伝子を含む複数の遺伝子の発現量に有意な差が見られた。 以上の結果から、野生型マウスとPOGZ変異マウスでは、社会行動時に活性化する前帯状皮質神経細胞の特性が異なっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、POGZ変異マウスにおいて社会性行動時に活動する前帯状皮質神経細胞を特徴づける遺伝子群を抽出できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、RNAシーケンスの結果をより詳細に解析し、in vivo カルシウムイメージング法などの手法を用いて、社会行動時に活動する野生型マウスとPOGZ変異マウスの神経細胞集団の特性、および社会性制御における役割を明らかにしていく予定である。
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