2022 Fiscal Year Annual Research Report
雑誌『日本のなかの朝鮮文化』をめぐる1970年代日本の越境的連携とネットワーク
Project/Area Number |
22J01063
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山口 祐香 神戸大学, 国際協力研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 市民運動 / 韓国・朝鮮 / 歴史認識 / 知識人 / 戦後史 / メディア史 / 雑誌 / 歴史実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、博士論文の成果を国内外の学会や講演、および論文投稿の形で発表した。また、本研究課題の主軸である雑誌『日本のなかの朝鮮文化』の言説分析と、文献調査およびインタビュー調査を行い、雑誌刊行をめぐる地域的条件と関係者の活動およびネットワークの整理・分析を行った。具体的には、本研究の理論的基盤の構築のため、在日朝鮮人運動史、大衆文化史、戦後日本史学史などに関する先行研究の検討を行った。また、同雑誌の編集・寄稿などに関わった人々の来歴と言説、およびネットワークを明らかにするために、雑誌全50号の記事内容の精査を行った。更に、京都市での資料収集を実施し、現存している一次・二次資料の調査と、関係者インタビューを行った。なお、当初は高麗美術館で雑誌刊行時の写真・議事録・読者からの投書などの一次資料を調査する予定だったが、新型コロナウイルスの流行に伴う行動制限と所有者側の都合で当初予定していた資料調査が出来なかったため、雑誌単体に限らず、比較的資料の集めやすい戦後京都の市民運動史や史学史などに範囲を広げた資料収集を行った。 今回、同誌の刊行関係者の所属と言説を分析した結果、在日朝鮮人知識人のみならず、60年代後半以降活発化した民衆史・部落史・古代史・地域史研究に影響を受けた人々の関与が深いことが分かり、更に70年代の京都大学人文科学研究所を中心とする関西の学際的な研究者たちと文化人が雑誌刊行を下支えしていたネットワークを整理することが出来た。本年度の研究成果は、国内の研究会の他、カルチュラル・スタディーズ学会および同時代史学会の年次大会にて学会発表を行った。 また、本課題を通じて、在日朝鮮人による文化芸術表現の意義についても関心が広がったことから、シンポジウム「表現者たちの『コリア』:越境・アート・共生の視点から」(2023年3月13日/神戸青年学生センター)を主催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウイルス流行拡大のため、予定していた関東での資料調査が十分に出来なかった上、一部資料の閲覧が出来ないという不測の事態に直面した。しかしながら、範囲を広げた資料収集を行った結果、本研究課題の考察においては、当初予定した雑誌『日本のなかの朝鮮文化』を中心とする分析のみならず、戦後京都という時空間の把握と、70年代日本人の韓国・朝鮮認識の観点から検討していくことが可能であるという着想を得ることが出来た。また、次年度にインタビュー可能な協力者とのコンタクトを複数得ることにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、70年代日本の学術研究およびメディア空間における韓国・朝鮮観の変遷に焦点を絞り、雑誌内で展開された議論の詳細を分析しつつ、同誌の意義について明らかにし、論文執筆を行う予定である。具体的には、①『日本のなかの朝鮮文化』を手がかりとした日本人市民の「韓国・朝鮮観」の言説分析、②戦後日本の朝鮮史研究史上における上田正昭の位置づけ、③京都大学人文科学研究所の「韓国・朝鮮」研究の3つを軸に研究を進め、論文執筆を行う。また、7月より2か月間韓国・ソウル大学校日本研究所への滞在を予定しており、韓国における戦後史学史・在日朝鮮人史に関する資料収集を行う。
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