2022 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトにおけるbFGFシグナルを介した神経炎症病態制御機構の解析
Project/Area Number |
22J12193
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 祐紀 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | Ror1 / アストロサイト / 脂肪酸代謝 / PPAR / Cpt1a |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系に最も豊富に存在するグリア細胞であるアストロサイトは、脂肪酸の代謝物を神経細胞へ供給することや、過剰な脂肪酸から神経細胞を保護するはたらきをもつなど脂肪酸代謝制御に重要な役割を果たす。アストロサイトによる脂肪酸代謝は、生理的、病理的な状況いずれにおいても重要であるが、その分子機構は不明である。 我々は、これまでにRorファミリー受容体であるRor1が神経幹細胞に高発現していることを見出していたが、その機能は不明であった。 本年度は、成体においてRor1がアストロサイトに発現していることに着目し、アストロサイトにおけるRor1の機能について解析を行った。RNA-seq解析によって、Ror1によって発現制御される遺伝子群として、脂肪酸代謝の律速酵素であるCpt1aを含む脂肪酸代謝に関連する遺伝子群を同定した。Ror1によるこれらの遺伝子群の発現制御には核内受容体PPARαを介することを見出し、Ro1-PPARシグナルは脂肪滴に由来する脂肪酸をミトコンドリアで利用するために重要であることを明らかにした。以上の結果をGenes to Cell誌において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析により、Ror1の新規標的遺伝子として脂肪酸代謝にかかわる遺伝子を同定できた。また、Ror1はPPARを介してこれらの標的遺伝子の発現を制御していることを明らかにした。これまで未解明であった生理的条件下におけるアストロサイトの脂肪酸代謝制御の仕組みを明らかにできた一方で、当初の計画とは異なる進捗になったため、本区分評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からアストロサイトの傷害性に関わりうる遺伝子発現制御に重要な転写因子を見出している。2023年度は、同定した転写因子の遺伝子発現制御の評価として、ウィルスベクターを用いてin vitroでの発現解析を行うことで、傷害性に関与する機能領域を特定する。また、アストロサイトにおける同定した転写因子の活性化が神経傷害作用を抑制するかを検討する。具体的には、タモキシフェンによって転写因子を活性化させたマウスにおいて損傷を誘導し、オリゴデンドロサイトの細胞死を定量することで傷害性の評価を定量する。また、bFGFシグナル下流における同定した転写因子の活性機序を、機能領域をもとに解析を行う。以上により、bFGFシグナルによるアストロサイトの傷害作用の増強に関わる遺伝子発現制御機構を明らかにする。
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