2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J22346
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 聖 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 寿命 / 老化 / 免疫 / 自然免疫 / 嗅覚 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界において嗅覚は動物の生存競争を勝ち抜くために重要な感覚であるが、近年の研究から嗅覚は個体の生理状態にも影響を与えることが分かってきた。興味深いことに、嗅覚は個体寿命や免疫系にも影響を与えることが報告されている。しかし、その詳しいメカニズムについてはほとんど明らかになっていないのが現状である。本研究はキイロショウジョウバエを用いて嗅覚による自然免疫制御メカニズムの解明を目指すことを目的としている。まず、in vivoでの非侵襲的および経時的な遺伝子発現解析手法とTRPA1チャネルによる温度依存的な神経活性化手法を用いて、自然免疫に影響を与える嗅覚受容体神経(ORN)の網羅的な解析を行った。これまでにほぼ全てのORNに対して調査を行い、その結果、いくつかのORNが候補として挙がった。その中でも最も自然免疫を活性化したORNを第一の候補としてさらなる解析を進めた。そのORNの活性化によって、細菌感染時に素早く自然免疫関連遺伝子の発現量上昇が可能になり、実際に細菌感染時のハエの生存率が著しく向上すること、ハエ体内の生菌数が減少することを明らかにした。このように、このORNの活性化は細菌感染時などには有利に働くと考えられるが、一方で細菌非感染時に慢性的にこのORNを活性化することで、逆に生存に不利になる結果も得られた。今後はこのORNの活動と自然免疫の活性化を繋ぐ分子的なシグナル経路をRNA-seq等を用いて明らかにすることを目指しつつ、寿命やストレス耐性に対してこのORNの活性化が与える影響についてもさらなる調査を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通り進んでおり、自然免疫に影響を与える嗅覚受容体神経の同定および、その神経活性化による生理状態への影響などが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず同定した嗅覚受容体神経(ORN)の活性化が真に自然免疫に影響を与えることを確認するために、嗅覚受容体の変異体やオプトジェネティクス、受容体のリガンド(匂い物質)などを用いて追加検証を行う。また、このORNの活動と自然免疫の活性化を繋ぐ分子的なシグナル経路や関与組織を特定するために、RNA-seq解析等を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行う。さらに、このORNの慢性的な活性化が個体の生理状態や寿命、ストレス耐性にどのような影響を及ぼすかをさらに調査するために、メタボローム解析や腸内細菌叢のメタゲノム解析を用いる予定である。
|