2023 Fiscal Year Research-status Report
新規リソソーム膜損傷応答機構と神経変性疾患におけるその役割の解明
Project/Area Number |
22KJ2340
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮良 香苗 広島大学, 医系科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | リソソーム / リソソーム膜損傷 / LLOMe / カテプシンD / タンパク質不溶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに「リソソーム酵素の不溶化」の分子メカニズムに液-液相分離が関与する可能性を見出した。そこで今年度は、液-液相分離への関与が報告されているGalectin-3(Gal3)に着目した。CRISPR/Cas9システムを利用して作製したGal3欠損HeLa細胞にLLOMeを曝露したところ、カテプシンDの不溶化が一部抑制された。このことから、「リソソーム酵素の不溶化」にGal3が関与する可能性が示された。 次にリソソーム膜損傷時におけるリソソーム酵素の局在を評価した。これまでに行ってきた免疫細胞化学染色では正常細胞におけるリソソーム酵素とLAMP1(リソソームマーカーとして)の共局在が観察されにくく染色条件を改善する必要があった。そのため今年度は、LAMP1-mCherryを過剰発現したHeLa細胞にPepstatin A, BODIPY FL Conjugate (Thermo Fisher Scientific社)を添加することで成熟カテプシンDを標識し、共焦点レーザー顕微鏡下にて観察を行う生細胞イメージング系を確立した。この系を用いてLLOMe曝露後のカテプシンDの局在を観察したところ、カテプシンDは正常細胞と同様にLAMP1と共局在しており、リソソーム膜損傷後もリソソーム外に漏出しないことが示された。 さらに今年度は、LLOMeがリソソーム酵素のみならずリソソーム膜タンパク質LAMP1をも不溶化することが明らかとなり、リソソーム自体が不溶化していることが考えられた。一方、LLOMeによりミトコンドリアタンパク質Tom20の不溶化は引き起こされなかったことから、リソソーム膜損傷によるタンパク質の不溶化は、リソソーム特異的な現象であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リソソーム膜損傷により、リソソーム酵素のみならずリソソーム自体の不溶化が引き起こされることが認められ、本現象の分子メカニズム解明を進めるうえで重要な知見が得られた。また、リソソームタンパク質の不溶化に関与する因子としてGal3を見出すことができ、分子メカニズムの解明が進捗したといえる。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
リソソーム膜損傷によるリソソームタンパク質不溶化の一般性をより広く検討するため、現在検討済みであるLLOMeやsilicaに加えて他のリソソーム損傷剤であるGly-Phe β-naphthylamideおよびDC661によっても同現象が引き起こされるか否かを検討する。リソソームタンパク質不溶化の分子メカニズムに関しては、Gal3欠損によるカテプシンD不溶化の抑制が一部のみであったことから、他にも複合的に関与する因子が存在する可能性を踏まえ、引き続き不溶化のキーとなる因子の探索を進める。また、LLOMeを曝露したマウス大脳皮質初代培養神経細胞において不溶性リソソーム酵素凝集体に神経変性疾患タンパク質凝集体が含まれるか否かの評価を行い、本現象と神経変性疾患との関連性を検証する。
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