2022 Fiscal Year Annual Research Report
凝集体難病の予防法確立に向けた小胞体膜タンパク質品質管理機構の解明
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22J20016
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
城 裕己 徳島大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 小胞体 / タンパク質凝集体 / CLN6 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はタンパク質凝集体難病の予防法確立である。タンパク質凝集体の異常蓄積はアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経変性疾患において共通の病理学的特徴であり、発症要因とも捉えられている。これまで小胞体膜微小環境にタンパク質凝集体の形成を抑止する機能(凝集抑止機能)が備わることを見出し、同機能の実体分子として小胞体7回膜貫通タンパク質Ceroid Lipofuscinosis Neuronal protein 6(CLN6)を報告した。研究代表者はCLN6を取り巻く分子ネットワークを解明することで、小胞体膜微小環境においてタンパク質凝集を制御する「タンパク質品質管理機構」を実証できると考えており、研究期間内に「タンパク質品質管理機構」に基づくタンパク質凝集体難病の予防法提示を目指している。令和4年度には、単離・同定済みのCLN6の共働候補分子について細胞から個体レベルまでを解析し、以下3点を明らかにした。(1)CLN6共働候補分子のうち、2分子が凝集抑止機能を発揮することを確認し、(2)CLN6における2分子の結合領域を明らかにした。(3)CRISPR-Cas9システムを利用してゼブラフィッシュ受精卵で共働候補分子をノックアウトすることでタンパク質品質管理機構の不全モデル確立を目指した。この研究成果は、小胞体膜微小環境における「タンパク質品質管理機構」の一端を明らかにしたことを意味しており、タンパク質凝集体難病全般を「タンパク質品質管理機構」の破綻が引き起こす疾患として捉えなおすことで新規の治療・予防法を提示できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小胞体膜微小環境に備わる「タンパク質品質管理機構」がどのような分子で構成されているのか、それらの分子がどのように働いているのか、に回答するために、既に単離・同定しているCLN6の共働候補分子について凝集抑止機能を評価することに加え、CLN6との結合領域を同定することで機能的・物理的な共働関係を示すことを計画した。令和4年度は、共働候補分子のうち2分子が凝集抑止機能を発揮することを見出し、それらの分子に関してCLN6との結合領域を絞り込むことに成功した。これは2つの共働候補分子がCLN6を中心とする凝集抑止機能を支えていることを示唆している。また、CRISPR-Cas9システムを利用して共働候補分子をゼブラフィッシュの受精卵でノックアウトしたところ、一部の個体において特異的なフェノタイプを確認することができた。これらの結果からも、小胞体膜微小環境における「タンパク質品質管理機構」の理解に向けて着実に歩を進めているといえる。令和5年度は、「タンパク質品質管理機構」を担う分子をノックアウトしたゼブラフィッシュで組織解析・行動解析を実施し、タンパク質凝集体の形成・蓄積が確認されるかどうか検証する。併せて、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのタンパク質凝集体難病を発症することで既にコンセンサスが得られている凝集性タンパク質変異体を細胞および個体で発現させることでタンパク質凝集体疾患モデルを確立し、この疾患モデルにおいて「タンパク質品質管理機構」に基づく凝集抑止が奏功するかどうか確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究結果から、小胞体膜微小環境で発揮される凝集抑止機能がCLN6を中心としたタンパク質複合体によって制御されている可能性を示した。この生体に備わる「タンパク質品質管理機構」の機能実体を理解することは、さまざまなタンパク質凝集体難病に最適な治療法・予防法を確立する上で必須である。したがって、令和5年度は「タンパク質品質管理機構を担う分子群はどのようにして凝集抑止を実現しているのか?」という疑問に回答することに注力する。具体的には、以下5点を実施する。(1)既に同定したCLN6と共働候補分子間における結合領域をアミノ酸レベルで特定し、(2)特定したアミノ酸において報告されている疾患関連変異を導入することで凝集抑止機能への影響を評価する。変異導入することで凝集抑止機能が喪失されれば、疾患発症の要因を「タンパク質品質管理機構」の破綻であると考えることができる。また、(3)「タンパク質品質管理機構」を担う分子(CLN6および共働候補分子)をノックアウトしたゼブラフィッシュ個体で組織解析・行動解析を実施し、タンパク質凝集体の形成・蓄積が確認されるかどうか検証する。併行して、(4)パーキンソン病であればalpha-シヌクレイン、筋萎縮性側索硬化症(ALS)であればTDP-43やSOD1、のようにタンパク質凝集体難病を発症することが知られている凝集性タンパク質変異体を細胞およびゼブラフィッシュ個体で発現させることでタンパク質凝集体疾患モデルを確立し、(5)この疾患モデルにおいて「タンパク質品質管理機構」に基づく凝集抑止が奏功するかどうか確認する。
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