2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規癌抑制因子PPM1Hホスファターゼの創薬への応用に向けた分子的基盤の創成
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21J22558
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大澤 仁 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質 / 脱リン酸化 / 肺がん / 海洋微生物抽出物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特定の肺がん患者の予後不良を促進することが近年指摘されている、タンパク質脱リン酸化酵素PPM1Hを標的とした肺がん抑制法の有効性を検討する。しかし、PPM1Hを特異的に阻害できる化合物は未だ一切発見されていないため、まずは長崎大学と共同でPPM1Hの阻害剤の探索を行った。長崎大学海洋微生物抽出物ライブラリーを用いて、PPM1H阻害化合物を含む抽出物の探索を行ったところ、PPM1Hの活性を阻害するヒット抽出物が得られたため、抽出物中に含まれる、PPM1H阻害活性を持つ化合物の単離と同定を試みた。この抽出物の分画と、各画分の阻害活性の評価を繰り返し行い、阻害活性を持つ化合物を絞り込んだ。4次分画まで行ったところ、突然活性を持つ画分が消失したため、3次分画サンプルのLC-MS解析を行った結果、ある分子量の化合物を4次分画時に取り損ねていたことが明らかになった。そこでその分子量の化合物を含むように再分画したところ、阻害活性が再度見られるようになった。このことから、この化合物がPPM1H阻害活性を持つのではないかと推測された。以上の成果は未だ発見されていないPPM1H阻害化合物の同定における大きなヒントを与え、PPM1H阻害化合物を同定できる可能性を高める結果であるといえる。今後は微生物抽出物中に含まれるPPM1Hを阻害する化合物を同定し、この化合物が肺がんの抑制に有用なのかを評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は海洋微生物抽出物中に含まれるPPM1Hを阻害する化合物を同定するために、抽出物の分画と画分ごとの評価による目的化合物の絞り込みを行った。しかし、途中で分画に用いる機器の故障に見舞われてしまい、研究に遅れが生じた。また、分画中に突如として活性を持つ画分が消えてしまい、その原因の究明に時間を割く必要が生じた。しかし、質量分析による詳細な解析により、目的の化合物の分子量を一気に絞り込むことに成功し、これまでの遅れを帳消しにできるくらいの進展が見られたため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
目的化合物の絞り込みが順調に進んでいるため、今年度は化合物の同定を行う。化合物が同定でき次第、PPM1Hに対する阻害活性の強さや阻害特異性を評価する。また、その化合物が細胞内のPPM1Hを阻害することができるのか、そして肺がん細胞の増殖や転移浸潤能を抑制できるのかを評価し、PPM1H阻害による肺がん抑制法の妥当性について検討を行う。
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Research Products
(3 results)