2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規蛍光ソルバトクロミック色素の開発とそのエクソソーム脂質膜の動態解析への応用
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22J23358
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
関 仁望 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 蛍光ソルバトクロミック色素 / 蛍光色素 / 細胞外小胞 / エクソソーム / 脂質膜 / 脂質ラフト / 蛍光イメージング / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
生細胞を囲む脂質膜中には脂質ラフトと呼ばれる膜ドメインが存在し、同部位において細胞間の情報伝達や物質取り込みが行われていると考えられていることから、脂質膜の動態観察は細胞機能を理解する上で極めて重要な取り組みとなっている。この脂質膜を有するオルガネラとしてエクソソーム(EVs)が挙げられる。細胞外小胞の一つであるEVsは細胞間の情報伝達に関与することが明らかになっており、EVsを介した細胞間伝達の機能不全によって免疫疾患や神経疾患といった様々な疾患が引き起こされると考えられている。本研究課題ではそのEVsの脂質膜に着目し、EVsの脂質膜を標的とした新規蛍光ソルバトクロミック色素を開発することで、EVsを囲む脂質膜の組成(脂質の種類やコレステロールの分布)、物理的性質(極性や粘性等)や動態を明らかにし、EVsの諸機能における脂質膜の役割の解明を目指す。 今年度は、EVs脂質膜の解析に最適な蛍光ソルバトクロミック色素の設計・合成に取り組んだ。以前開発した蛍光ソルバトクロミック色素PKは、鋭敏な蛍光ソルバトクロミズム特性と高い光安定性を示すものの、脂質膜への局在性が低いという課題点があった。そのため、PKの優れた光機能性を維持しつつ脂質膜への吸着性を持った新規蛍光ソルバトクロミック色素の開発を目指した。その結果、アニオン性アンカー部位をPKの電子ドナー部位に導入した色素と電子アクセプター部位に導入した色素の2種類の蛍光ソルバトクロミック色素の合成に成功し、いずれの色素もPKの優れた光機能性を維持していることがわかった。また、人工脂質膜であるリポソームに対する応答性を確認したところ、どちらもリポソームに吸着し、そのリポソームを構成する脂質の組成に応答して、異なる組成からなるリポソームを区別することに成功した。この結果から、EVs脂質膜の解析を行う上で開発した色素が有用であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①EVs脂質膜染色用蛍光ソルバトクロミック色素を開発して、②EVs脂質膜組成・物性評価と細胞取り込みにおける役割を解明し、さらには、③EVs脂質膜の血液中における動態と細胞取り込みにおける役割を解明することを目指している。この①~③のうち、①を達成したことから順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に挙げる計画を実施していく予定である。また、実験結果によっては、開発した蛍光色素の更なる改良を行うことも視野に入れる。 【計画①】がん細胞や正常細胞から抽出されたEVsを染色し、その蛍光スペクトル・蛍光寿命を測定・解析する。これにより、細胞種の違いがEVs脂質膜の組成と物理的性質にどのような違いをもたらすかを明らかにし、体系化する。 【計画②】各種EVsをドナー細胞、もしくは他の細胞と共存させ、細胞取り込み効率を評価すると共に、その様子をスペクトル分解性と時間分解性に優れた超解像イメージングで撮影する。これにより、EVs脂質膜組成・物理的性質の細胞取り込みにおける役割を解明する。 【計画③】計画②において、種々の刺激(脂質膜のパッキングや粘度、極性に影響するコレステロールの添加/除去、あるいは酸化剤の添加など)を与えたEVsを活用し、同様の実験を行う。これにより、EVsの脂質膜組成・物理的性質を制御することで、EVsの細胞取り込み効率を増減できるか検討する。 【計画④】ゼブラフィッシュを用いたin vivoイメージングにより、EVs脂質膜の血液中における動態と細胞取り込みにおける役割を解明する。スペクトル分解により、染色EVsの血中投与前、血中、細胞取り込み後の各段階における脂質膜組成を明らかにする。これにより、EVs脂質膜の体液中における動態と、それらが細胞取り込みにどのような影響を及ぼすかについて計画②と併せて評価する。
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