2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J00573
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 惇志 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 膜物性 / ソルバトクロミズム / 形質膜 / 上皮細胞 / アルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究から、アルコールは上皮細胞において脂質局在や膜物性の変化を引き起こす可能性が示唆された。しかし、生細胞の膜物性の観察手法は限られている。そこで本年度は、生体膜、特に形質膜の流動性の変化を捉える手法の確立を試みた。 細胞における膜物性を可視化する技術のひとつとして、環境によって蛍光波長の変わるソルバトクロミック色素を用いた観察が挙げられる。これらの色素は、流動性の低い膜では短波長、流動性の高い膜では長波長の蛍光を発するため、共焦点蛍光顕微鏡で異なる波長のシグナルを同時取得し、比として表すことで膜の流動性を可視化できる。 近年報告された、高輝度のソルバトクロミック色素であるPKを用いた、培養上皮細胞の観察系を確立した。実際にPKを用いて観察を行ったところ、細胞内膜のシグナルが強く、相対的に形質膜のシグナルが弱いため、細胞接着構造の存在する形質膜の流動性変化を観察するのは困難であることがわかった。そこでPKの物性に着目し、新たに化学修飾を施すことで、形質膜に保持させる改変を行った。人工脂質膜を用いた観察から、改変型PKでも膜流動性に依存して波長が変化することがわかった。そこで実際に培養細胞を用いて観察を行ったところ、細胞内膜の強いシグナルがなくなり、形質膜特異的なシグナルが得られる新規プローブが複数得られた。また、改変型PKと蛍光タンパク質との同時観察系を確立しており、タンパク質の局在と関連した膜流動性変化の観察を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の膜の中でも特に形質膜の物性変化を明らかにすることを試みる中で、既存の膜流動性プローブPKを用いると細胞内膜に強いシグナルが観察され、形質膜のみの解析が困難であるという問題点が発覚した。そこでPKに様々な化学修飾を施し、プローブの局在を形質膜に限局させることが可能な官能基を複数同定した。新規プローブと蛍光タグ融合タンパク質の同時観察の条件も確立しており、アルコールによる形質膜の脂質分布・膜物性の変化だけでなく、様々な細胞現象に着目した研究への応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
形質膜の脂質組成・膜物性の変化が予想される条件において、改変型PKを用いた解析を行うことで、生細胞の形質膜における膜流動性変化を検出できるかを検討する。また、アルコール処理によってどのように上皮細胞の形質膜流動性が変化するかを観察する。この結果を他の脂質プローブ・膜タンパク質の観察と合わせて解析することで、アルコールが上皮細胞の脂質分布や膜物性・タンパク質の局在にどのように影響するかを明らかにする。また、脂質代謝や組成の異なる細胞を用いることで、アルコールの細胞効果の脂質依存性を検討する。
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Research Products
(1 results)