2021 Fiscal Year Annual Research Report
生体関連金属錯体ハイブリッド光触媒の合成とクリーン物質変換反応の開発
Project/Area Number |
21J21004
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
七條 慶太 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 光触媒 / 金属錯体 / コバルト錯体 / 可視光応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、天然由来のコバルト錯体であるビタミンB12と金属イオンを修飾した酸化チタンを組み合わせた可視光応答性ハイブリッド触媒の合成に取り組んだ(B12-TiO2ユニット)。ロジウムや鉄、銅、マグネシウムなど複数の金属イオンを利用した金属イオン修飾酸化チタンを合成し、そこへB12錯体を複合化することでハイブリッド触媒を作製した。触媒活性の違いを比較すると、マグネシウムイオンを用いた場合が最も高くなることがわかった。これは、金属イオンとしてロジウムや銅を用いると、生じた励起電子が固定化されたB12錯体側ではなく、金属イオン側へと移動してしまうため、B12錯体の活性化効率が下がってしまう一方で、マグネシウムを利用した場合は、金属種側へ電子が移動することがなく、B12錯体の活性化を促進できたためだと考察している。以上の結果より、B12-TiO2ユニットにおいて、マグネシウムイオンのような還元電位の高い金属種を助触媒として利用することが重要であると結論づけた。以上の結果を2つの国際学会で報告し、現在学術論文投稿中である。 最も高い性質を示したマグネシウムイオンを利用したハイブリッド触媒(B12-Mg2+/TiO2)を用いて、新しい有機合成反応の開発にも取り組んだ。具体的には、工業的に重要な尿素誘導体の合成反応を開発した。ここでは、基質として四塩化炭素を、求核剤としてアミン類を利用することで収率最大80%で尿素誘導体を合成できることを見出した。一般的に尿素は、有害かつ気体で取り扱いの難しいホスゲンから生成されるが、本反応系では液体で取り扱いが容易な四塩化炭素から合成することに成功している。従って本反応は学術的にも工業的にも有用な反応であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、天然由来のコバルト錯体であるビタミンB12と可視光応答性光触媒の金属イオン修飾酸化チタンを複合化したハイブリッド触媒(B12-TiO2ユニット)の開発と機能評価に加え、本触媒を用いた新規反応の開発を計画していた。現在までの研究において、B12-TiO2ユニットは、マグネシウムイオンを助触媒として修飾した酸化チタンを利用することで最も高い性能を示すことを種々の検討から見出した。加えて、B12-TiO2ユニットを触媒として利用した新規光触媒的合成反応の開発については、四塩化炭素を基質として利用した尿素合成反応を開発した。現在まではアミドとエステルの合成に限られていたが、四塩化炭素を基質とすることで尿素など工業的に価値のある化合物を可視光エネルギーで合成できるようになった。以上のように、本年度は当初計画した内容はおおむね順調に進展し結果を得ることができていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究はおおむね順調に進展した。従って、令和4年度も当初の計画に準じて実験を遂行していく予定である。具体的には、水を電子源として触媒活性種のCo(I)種を生成できる触媒システムの構築を目指す。ここでは、令和3年度の研究で、最も高い性能を示すことがわかったB12-TiO2ユニット(金属イオンとしてマグネシウムイオンを利用したB12-Mg2+/TiO2)と酸化タングステンや酸窒化タンタルなど複数の無機半導体光触媒を組み合わせる。B12-TiO2ユニットと無機半導体光触媒を混ぜ合わせた粉体を水/アセトニトリル混合溶媒に懸濁させた溶液に可視光(λ>420 nm)を照射した際のUV-VISスペクトル変化を測定する。これにより、Co(I)種に典型的な390 nmのピークが観測されるか調査する。本実験により、Co(I)種が確認された場合は、その電子移動機構を詳細に解明するために過渡吸収スペクトル測定を行う。いずれの組み合わせでもCo(I)種の生成を確認できなかった場合は、Zスキーム型の電子移動を促進することが知られているメディエータ(ヨウ化ナトリウムや塩化鉄など)を加えてCo(I)種が生成するか確認する。以上の方法によって、水を電子源として触媒活性種のCo(I)種を生成できるシステムを構築する。 以上の計画に加えて、水を電子源、可視光を駆動力とするシステムを構築するために、錯体部位であるB12錯体部分についても検討する。具体的には、B12錯体の配位子であるコリン環の共役系を変化させたり、置換基を導入したりすることによって、活性種を与えやすい新規錯体を設計し、合成する。
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