2022 Fiscal Year Annual Research Report
生体関連金属錯体ハイブリッド光触媒の合成とクリーン物質変換反応の開発
Project/Area Number |
21J21004
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
七條 慶太 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 光触媒 / 金属錯体 / コバルト錯体 / 可視光応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、天然由来コバルト錯体であるビタミンB12と金属イオンを修飾した酸化チタンを組み合わせたハイブリッド触媒(B12-TiO2ユニット)の合成と反応性を評価した結果についてまとめ、学術論文に投稿し、採択された。また、本光触媒を用いた有機物質変換反応として、四塩化炭素を出発資源とするカルバメート合成、炭酸エステル合成にも取り組んだ。その結果、犠牲還元剤を添加した条件でB12-TiO2ユニットに可視光を照射すると、四塩化炭素を目的のカルバメートへ最大97%で変換できた。また、10種類以上の基質に本反応は適応可能であることを見出した。工業的に重要な炭酸時フェニルも合成可能であることを確認した。現在、本研究の結果をB12-TiO2ユニットを利用した新たな有機合成反応として論文を執筆中である。 犠牲還元剤を利用せず水を電子源とすることができるZスキーム型電子移動を達成するために、B12-TiO2ユニットと組み合わせる光触媒として酸化タングステン(WO3)に着目した。そこで今年度はまず、WO3のみの物性に着目した光触媒システムを構築した。具体的には、新たにビタミンB12錯体の配位子の構造を改良し、π共役系を拡張させた新たなビタミンB12錯体のPyrocobesterとWO3を組み合わせたシステムを開発した。本システムに、アルコール中で可視光を照射すると、Co(I)種が効率的に生成することが確認された。また、水を含むアセトニトリル中で可視光を照射しても同様にCo(I)種の生成を確認できた。以上より、本システムを利用することで、可視光を駆動力、水を電子源とするシステムを開発することができたと言える。以上の内容を3つの国際会議で報告し、学術論文を投稿し、査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、B12-TiO2ユニットを利用した新規反応の開発、Zスキーム型光触媒に利用する予定の酸化タングステン光触媒(WO3)の調整、新規ビタミンB12錯体(Pyrocobester)の合成と評価、PyrocobesterとWO3を組み合わせたシステムの開発に成功した。以上のように、多角的な視点を持ち、幅広い研究を展開することができた。また、PyrocobetserとWO3を用いたシステムでは、水を含むアセトニトリル中での可視光照射によってCo(I)種を生成できることを見出している。すなわち、本システムを利用することで、可視光を駆動力、水を電子源として触媒活性種のCo(I)種を生成できることを示している。これは、当初の研究目的を別の方法で達成できた点で非常に価値がある。したがって、研究の進捗は非常に順調であると言える。一方でWO3とB12-TiO2ユニットを組み合わせたZスキーム型光触媒の開発は引き続き検討中であるため、本年度の進捗状況を概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究では、Zスキーム型光触媒の開発に加えて、新規錯体であるPyrocobetserとWO3を組み合わせたシステムを開発し、可視光を駆動力、水を電子源として触媒活性種のCo(I)種を生成できるか評価してきた。そこで、令和5年度は、引き続き①目的である Zスキーム型光触媒システムの開発に従事するとともに、②新たに開発したPyrocobesterとWO3のシステムを利用した物質変換反応に着手する。まず、①ではB12-TiO2ユニットとWO3を利用してZスキーム型電子移動が可能になる電子メディエーターを検討する(例えば、ヨウ化ナトリウムや塩化鉄など)。420 nm以上の可視光を照射してCo(I)種が効率的に生成できるシステムを引き続き検索する。また、Co(I)種の生成を確認した場合、そのシステムを利用して、可視光を駆動力、水を電子源とするトリクロロメチル化合物のアミド化やエステル化を実行する予定である。②では、すでにCo(I)種の生成を確認したため、実際に有機物質変換反応への応用を検討していく。 以上のように、令和5年度は、水から獲得した電子を利用して触媒活性種のCo(I)種を生成できるようになるだけでなく、実際に有機物質変換まで実行することに尽力する。
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