2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞におけるシスチン取込みトランスポーター活性の新規概日リズム制御機構の解明
Project/Area Number |
21J21208
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 智暁 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | システイン代謝 / xCT / 概日リズム / がん代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度では、担癌モデルマウスを用いてxCTにより供給されるシスチン・システインの腫瘍内含量の概日リズムを評価した。その結果、概日リズムについては議論の余地がある結果となったが、腫瘍内では正常組織と比べてシステインの含量が上昇していること、システイン代謝とその概日リズムが大きく変化していることを新たに見出した。本所見は、がん細胞のシステイン代謝の概日リズムという大きな括りで新規の知見が得られることを示唆しており、学術的価値のみならずシステイン代謝を標的とした治療戦略に繋がり得るという臨床薬学の面においても貢献が大きいことから当初予定していた研究に追加して検討を行った。実験では、担癌モデルマウスを用いてシステイン関連代謝物の組織内含量およびシステイン代謝に関わる遺伝子のmRNA発現量の概日リズムを測定し、正常組織と腫瘍組織で比較を行った。その結果、細胞ががん化すると細胞への主要なシステイン供給経路が細胞内での生合成経路から細胞外からの取込み経路に変化することが明らかになった。また、代謝物・遺伝子ともにがん化に伴ってその概日リズムが変容していた。加えて、がん細胞内で上昇したシステインは、従来知られていたグルタチオン合成によりがん細胞の増殖を促すのではなく、細胞周期タンパク質のmRNAの翻訳を亢進させることで増殖を促進することを見出している。以上の研究成果は国内学会においても発表しており、優秀発表賞を受賞している(第15回次世代を担う若手のための医療薬科学シンポジウム/2021年10月)。次年度以降は、グルココルチコイドによるxCTの活性制御機構について引き続き検討していくとともに、がん化に伴うシステイン代謝の概日リズム変容のメカニズムおよび病態学的意義についても追究していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「がん細胞におけるxCT活性の概日リズム制御機構の解明」という点では当初予定していたIn vivoでの検討が十分に進んでおらず、進捗状況としては遅れている。一方で、In vitroにおいては予備検討段階ではあるものの培養がん細胞にグルココルチコイドを曝露することでxCTのリン酸化が引き起こされていることを示唆するデータが得られており、メカニズムの解明が完全に止まっているわけではない。加えて、本研究を進める過程で「がん細胞におけるシステイン代謝の概日リズム変容」という重要な知見が新たに見出された。こちらについては、がん細胞でシステイン代謝の概日リズムが変化する原因とその病態学的意義の両側面から検討を行っており、いずれについても多くの知見が得られていることから概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度以降は、当初予定していた、がん細胞におけるxCT活性の概日リズム制御機構の解明に加えて、令和3年度の研究で新たに見出された、がん細胞におけるシステイン代謝の概日リズム変容のメカニズムおよび病態学的意義の解明についても検討を進めていきたいと考えている。前者については、培養がん細胞を用いてグルココルチコイドによりxCTのリン酸化が引き起こされることおよびその分子メカニズムを追究していく予定である。また、後者については、がん化に伴いシステイン代謝に関わる遺伝子発現が変化する要因を明らかにするとともに、がん細胞内で上昇したシステインがどのようにして細胞周期タンパク質のmRNAの翻訳を促進しているのかを明らかにする予定である。
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