2023 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞におけるシスチン取込みトランスポーター活性の新規概日リズム制御機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2383
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 智暁 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | システイン代謝 / xCT / DNAメチル化 / 細胞周期 / Cyclin D / GCN2-ATF4-4E-BP1経路 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、xCTの概日リズム制御機構に着目していく中で新たに発見された「がん化に伴うシステイン代謝の概日リズム変容」に関して、メカニズムおよび病態学的意義の解析を中心として研究を行った。担癌モデルマウスおよび培養細胞を用いた解析から、がん化した細胞では正常細胞と比べてシステインの生合成経路が低下している一方で、xCTを介した細胞外からの供給経路が亢進していることを見出した。そのメカニズムとして、がん細胞ではDNAメチル化の亢進によりシステイン合成酵素の発現抑制が生じること、システイン合成能の低下がAKTシグナルの活性化を介してNRF2の発現を上昇させること、そして、NRF2がxCTの発現を転写レベルで上昇させることを明らかにした。以上の一連の経路を介してがん細胞では細胞外から細胞内へシステインを積極的に供給していることが明らかになった。また、細胞内で上昇したシステインの病態学的意義について解析を行った結果、細胞内のシステインはCyclin Dのタンパク質翻訳制御を介して細胞周期を亢進させていることが分かった。メカニズムの解析から、細胞内のシステインはGCN2-ATF4-4E-BP1経路の活性状態を制御することで、mRNAの翻訳開始に関わるeIF4Eの活性制御を担っていることを見出した。最後に、ここまで明らかにしてきた知見をがん治療に応用することを目指して、がん細胞へのシステイン供給に関わるxCTの阻害ががん細胞の増殖を抑えるか検討した。その結果、xCTを阻害することで細胞内のシステイン含量が減少すること、およびCyclin Dの発現低下に伴う細胞周期の停止と増殖抑制が生じることを培養細胞や担癌モデルマウスで明らかにした。 本研究では、当初予定していた計画とはややずれが生じたが、がん化に伴うシステイン代謝変容機構とその意義という新規かつ重要な発見をすることが出来た。
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Remarks |
本研究を通して明らかにした研究成果をもとに学術論文2報を執筆し、2024年4月時点で1報を投稿済み、もう1報も投稿手続きを行っている。
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