2023 Fiscal Year Annual Research Report
酸性腫瘍微小環境に応答し自家抗体をがん治療に起用するペプチド性中分子の開発
Project/Area Number |
22KJ2392
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田川 寛 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 新規がん治療 / 抗体 / ADCC / pHLIP / 抗体リクルート / 腫瘍微小酸性環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はがん細胞の抗原を標的とせず腫瘍周辺の酸性条件に応答してヒト体内の抗体を腫瘍に集積させがん細胞を傷害する新規がん治療手法の開発を目的とした。抗体医薬を利用するがん治療では、がん表面に発現するがん抗原を標的とする。血中投与された抗体医薬は血中を循環後、抗原を介しがん細胞に集積する。その後、NK細胞等の免疫細胞等と協働しエフェクター効果を発現しがん細胞を傷害する。抗体医薬はがん細胞に対し選択性があるため副作用が小さい等の利点があるものの、トリプルネガティブがん細胞のような主たるがん抗原を発現しないがん細胞には利用ができないといった課題がある。本研究では抗原非依存的な腫瘍標的手法と抗体リクルート手法の組み合わせにより特異的な抗原を発現しないがん細胞に対するがん治療の開発を目指した。腫瘍周辺は急速な細胞の増殖及び未成熟な血管形成等の影響により酸性に傾くことが広く知られている。そのような環境下で細胞膜に挿入するpHLIPというペプチドが開発され腫瘍に集積することが報告された。本研究の成果として、pHLIPと抗体結合分子を架橋し、内在性抗体と結合したのち腫瘍微小酸性環境に応答してがん細胞に抗体を修飾するpH-ARMと名付けた分子の合成、精製および同定をおこなった。また細胞実験において、作製分子による低pHに応答したがん表面への抗体の架橋に成功した。続いてNK細胞を用いたがん細胞傷害実験を行ったが、有意ながん細胞傷害は確認されなかった。傷害が誘導されない理由として、低pH条件において多くのNK細胞が死滅し活性が低下したことが主たる要因だと考えられ、この問題の克服のため活性化ヒトNK細胞を利用し同様の実験をおこなった。同様に多くのNK細胞の活性が失われた。また酸性条件でがん細胞傷害能が確認されている異なるNK細胞株を利用することを画策したが本研究の期間中に実行することはできなかった。
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