2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規熱輸送デバイスの創出に繋がるグラフェン液体セルを用いたナノスケール相変化実験
Project/Area Number |
22KJ2400
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣川 颯汰 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | グラフェン液体セル / 透過型電子顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / ナノスケール流体 / 固気液三相界線 / グラフェン / 圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ空間内に封入された液体は固体壁面との相互作用の影響を強く受けるためにバルクとは異なる挙動・性質を示すことが知られており,これを利用して新たな流体機器の創出を目指す研究が盛んに行われている。本研究ではナノ空間内部の流体挙動をグラフェン液体セル(GLC)を用いた透過型電子顕微鏡(TEM)による直接観察で明らかにすることを目的とした。 最終年度に当たる本年は,昨年度末に実施したGLCの3次元形状と内圧の原子間力顕微鏡(AFM)による測定結果をまとめて顕微鏡関連研究で高い評価を得ている雑誌から発表した。また,過去に発表した2つのナノ空間における特異な現象を,AFMで明らかになったGLCの形状を踏まえて再考察した。ナノ空間における気体分子の非拡散的挙動や非接触でのピニングの発生の原因を「GLCの上下のグラフェンの間隔が数nmしか無いと考えられるため,水分子の大半が固体面近傍で整列構造を取るため」と過去に考察していたが,AFMによるGLCの測定結果はこの考察を補強するものである。更に,昨年度に作成した井戸型のGLCを発展させ,幅数100 nm,長さ数μmの穴の上下をグラフェンで挟み込んだチャネル型のGLCの作成にも挑んだ。 研究期間全体を通し,数nmスケールの空間内での流体挙動の実験的研究にグラフェン液体セルの使用が有効であることを示せた。具体的には,気体分子の非拡散的挙動や非接触でのピニングといった,従来の手法では時空間解像度が不足しているために観察不可能であった現象を新たに発見することができた。さらに,グラフェン液体セルを用いた研究を促進するため,グラフェン液体セルの内部圧力と3次元形状の関係性を調査した。3年間の研究の成果は学会発表やおよび学位論文を通じて公表されている。
|