2021 Fiscal Year Annual Research Report
マルハキバガ科の分類学的研究と腐植物分解機構の解明
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21J22192
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
外村 俊輔 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | マルハキバガ科 / 分類学 / 腸内分解機構 / 幼虫生態 / 系統学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は野外での調査、分類学的研究、幼虫生態の観察を中心に行い、国内のマルハキバガ科のうち多くの種のサンプルを採集することができた。 分類学的研究では、北海道、九州、対馬、沖縄県、奄美大島にて調査を行った。従来の未記載種に加えて、追加で未記載種を見出した。本科で最も種数が多いPromalactis属のうち、特に南西諸島の種の殆どで新鮮な追加サンプルを得ることができ、DNAを含めた検討によって既知の未記載種に酷似する新たな未記載種を見出した。これらの成果は学会で発表している。一方で、対馬と北海道での調査では、目的の種を得られなかったが、既に得られていた標本を用いて、それらの地域に分布する2種を新種として記載し、論文を出版した。また、2012年に徳島県で行われた蛾類相調査で得られた標本を再検討し、本科の種の分布に関する新知見を得て、共同研究者らと共に論文を出版した。そのほか、九州と南西諸島から国内未記録属を3属採集した。いずれも産卵と飼育によって幼虫の生態が明らかになり、幼虫及び蛹の形態とDNAサンプルを得ることができた。うち1種は2年間の累代飼育に成功しており、生活環を解明できた。腐植物分解機構では、幼虫の飼育により、本科に近縁のミツボシキバガ科を含む5属6種の消化管を取り出して無水エタノール中に保存した。奥尉平氏との共同研究により次世代シーケンサーによるメタ16S解析の手法を用いた細菌叢の解明を計画していたが、実験室内でコンタミが発生したため2022年4月現在まで実験を中断しており、再開を目指している。交尾器機能の解明では、Promalactis属のうち、交尾器が非対称な種において未交尾成虫を得るための幼虫飼育が難航し、成虫を得ることができなかった。本年度は結合状態の保存には至らなかったため、多くの個体が飼育できている別属の種を用いて交尾状態の観察を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は野外採集、幼虫生態の観察、分類学的研究、分子系統解析を中心に行い、それぞれ一定の進捗があり、DNAが得られる新鮮な標本に関しても大半の種でサンプルを集めることができたほか、新たに未記録属が複数発見されるなど、予想以上の知見が得られた。一方で新型コロナウイルス感染症等の要因で博物館での標本調査を行えなかった。成果公表に関して、一部の種を新種として記載することができた。DNAの抽出と腐植物分解機構に関して、実験室内でコンタミが発生したため2022年4月現在まで実験を中断しており、若干の遅れが生じた。交尾状態の観察において、Promalactis属のうち、交尾器が非対称な種において未交尾成虫を得るための幼虫飼育が難航し、成虫を得ることができなかった点について遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は昨年度の予定であった博物館での標本調査を行うほか、南西諸島、中部地方の野外調査を行い、昨年度得られなかった種を中心に網羅的なサンプルの収集に注力する。また、研究室にて本科の知見に乏しい小笠原諸島で調査許可を得られたため、帯同して調査を行う。分子実験と腐植物の分解に関して、各種のDNAの抽出を再開し、分解酵素および腸内細菌の検定を行う。交尾状態の観察においては、幼虫飼育の温度などの条件を改善し成虫を得ることに努める。分類学的研究に関して、昨年度新たに得られた知見を含め、属の再検討などより大きい形での公表に努める。
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