2022 Fiscal Year Annual Research Report
16世紀中葉九州における地域権力・社会の構造変化と東アジア情勢
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22J00208
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
窪田 頌 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 戦国期地域権力 / 大友氏 / 戦国期九州 / 海域アジア / 16世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16世紀九州における権力構造の検討を通し、新たな地域権力論の構築を目指すことを目的としている。本年度は、(1)検討の前提となる史料収集・調査、(2)基礎的な政治過程・権力構造の整理を主として行った。(1)に関しては、九州地域に所在する史料の調査を行うとともに、これまでに集めた史料の再精査を進めることができている。この史料調査の成果に関しては、今後の研究に反映していくものと考えられる。 (2)については、九州地域における大名・有力領主の政治動向・社会秩序について分析を進めた。本年度は、16世紀中期の南部九州情勢が、明朝浙江当局の動向や、倭寇集団の活動状況、また畿内情勢とも密接に絡み合いながら展開していることを、『日本一鑑』など海外史料も用いながら検討を行い、すでに査読雑誌を投稿している。また大友氏の権力構造についても、中世法から近世法への遷移ということも踏まえた上で検討を加えた。大友氏権力は従来、重臣集団による合議が「制度的」に重要な意味を持つ合議的な権力とされてきた。しかし、日本中世における「法」の特質を考えると、「制度」なるものの存在そのものを問い直さねばならない。以上の点を踏まえて検討を重ねた結果、大友氏権力においては、当主の上意が権力の駆動において重要な役割を果たしており、重臣集団は当主の上意をもっとも得やすい人間関係を維持していたことを根拠として、権力内で大きな影響力を発揮した。つまり、大友氏権力を「合議」の権力とはみなすことができない。大友氏の権力構造は、傘下諸人が「上意」を求めてもっとも合理的な行動を行うことによって形成された構造であった。これについても、すでに論文化して査読雑誌に投稿しており、掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的とするところは、九州の地域権力を軸とした中近世移行の把握である。本年度の研究によって、その前提となる詳細な政治情勢の把握や、九州における地域権力の構造把握に一定の成果を得ることができた。これらの研究について、論文として公表することもできている。加えて、次年度以降の検討を行うための史資料収集も順次進めることができた。以上の点から、概ね順調に研究を遂行したと評価しえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、さらなる邦文史料の収集や、戦国期九州の政治過程や社会構造についての理解を深めるとともに、海外史料の収集・読解にも力を入れ、特に16世紀日本列島社会を東アジアの文脈からどのようにとらえられるのか、考察を進めたい。同時に、本年度収集した法学・文化人類学などの隣接諸学の成果の読解を進め、「近代国家」にとらわれない前近代の権力の記述法の検討も深めたい。
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Research Products
(3 results)