2023 Fiscal Year Research-status Report
同位体分析による中・古生代東アジアの構造発達史:日本列島と韓半島との対比
Project/Area Number |
22KJ2411
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川口 健太 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 大陸地塊 / 東アジア / 日本列島 / 京畿地塊 / ジルコンU-Pb年代 / 舞鶴帯 / 古生代 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島の骨格をなす基盤は古生代以降アジア大陸東縁部で成長し、中新世の日本海拡大によりアジア大陸から分離した。中新世以前の原日本列島がアジア大陸のどこで形成し、どう成長したのか、不明な点が多い。これは日本列島とアジア大陸とに共通する年代、形成プロセスを持つ基盤岩の出現が限定的であることに起因している。当該年度は、前年度に実施した鳥取県西部の江尾構造帯で採取した岩石試料の各種同位体測定を進め、同構造帯がこれまでに予想されてきたような古生代の地体ではなく、日本の関門層群や韓国の慶尚超層群に対比可能な、火山岩の形成を伴う白亜紀堆積盆であることが判明した。また日本列島と東アジア大陸地域に共通して分布する古生代花崗岩類に着目した野外地質調査と、古生代花崗岩類のジルコンU-Pb年代測定、Lu-Hf同位体測定、全岩化学組成測定等を新たに行った。このうち、特に京都府北部舞鶴地域に分布する舞鶴帯北帯の花崗岩類における各種同位体測定等が順調に進行した。野外での産状や記載岩石学的特徴、新たに取得した各種同位体データに基づくと、舞鶴地域の舞鶴帯北帯は年代の異なるオルドビス紀,石炭紀,ペルム紀の花崗岩類が複合岩体をなし、その起源物質は新原生代から古生代の地殻であることが予想される。これは、古原生代以前の地殻物質を起源として形成された韓半島の花崗岩類とは異なる形成プロセスを有し、舞鶴地域の舞鶴帯北帯がより新期の大陸縁辺部で形成されたことが示唆され、舞鶴帯北帯の進化プロセスとその起源に大きな制約を与える結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は韓国京畿地塊と日本の京都府北部舞鶴地域から岡山県東部にかけて分布する舞鶴帯の野外地質調査を中心に行った。現在まで、舞鶴地域の舞鶴帯北帯で採取した岩石試料のジルコンU-Pb年代測定に加え、ジルコンのLu-Hf同位体組成測定等が順調に進んでおり、①同地域から新たに石炭紀(311-301 Ma)のジルコンU-Pb年代を示す角閃石-黒雲母花崗閃緑岩を見出したこと、②オルドビス紀(464-447 Ma)とペルム紀(289-281 Ma)の黒雲母花崗岩が密接に産すること、③ジルコンのLu-Hf同位体組成は、年代値で規格化したεHf(t)値を用いると、オルドビス紀のものは+0.95から+3.05、石炭紀のものは+0.22 から +1.71を示すのに対し、ペルム紀のものはより高い+4.40から+12.22の値を示すこと、④オルドビス紀の黒雲母花崗岩と石炭紀の角閃石-黒雲母花崗閃緑岩は共通して新原生代の950 Maから650 Maを示すインヘリテッドジルコンを最大35%含むのに対し、ペルム紀のものはそれらを含まないことが判明した。つまり、オルドビス紀と石炭紀の花崗岩類は共通して新原生代の地殻物質を溶融し形成されたことが示唆される一方、ペルム紀の花崗岩類はより新期の地殻物質を溶融して形成されたことが示唆される。すなわち、花崗岩類を形成した地殻物質は石炭紀最後期の約300 Maからペルム紀前期の約290 Maにかけて大きく変化したことを意味する。舞鶴地域の舞鶴帯北帯で得られた花崗岩類の各種同位体数値データに基づく同地体の形成プロセスは、京畿地塊をはじめとする韓半島のそれとは大きくは異なることが明らかとなり、東アジア広域での対比の必要性が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本列島における古生代地体の起源については不明点が多い。それは日本列島における古生代火成岩体の出現が限定的で、それらの多くは断片的に産し、周囲の地体との関連性が不明なことに起因している。それらの起源について、地道な野外における産状の記載と、同位体測定を含む火成岩岩石学的精密解析をリンクさせたデータに基づき、広域アジアを俯瞰した対比研究を展開する。舞鶴地域における舞鶴帯北帯の進化プロセスを明らかにしたことに引き続き、舞鶴帯北帯の一部と同一年代の火成岩類が産する飛騨帯において上記研究を展開する。飛騨帯を覆う中新世火山岩に含まれるゼノリスは、地下に伏在する基盤岩の極めて重要な情報をもたらすことが期待されることから、ゼノリスを研究対象に追加する。広域アジアの同位体岩石学的データベースを編纂することにより、日本列島の古生代地体と広域アジア諸地体との対比検討を行う。古生代末から中生代初頭にかけて起きたアジア大陸地塊集散プロセスとリンクさせることにより、原日本列島の進化プロセスを古生代から中生代に至るまで連続的に解き明かすことを目標とする。
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