2022 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸空気質の直接制御を目的としたパーソナル型ハイブリッド換気システムの開発
Project/Area Number |
22J00743
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山澤 春菜 九州大学, 総合理工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | Hybrid Ventilation / Personal Ventilation / Stratified Ventilation / Digital Twin / Ventilation Efficiency / Transfer probability |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然換気と機械換気を組み合わせた従来型のハイブリッド換気システムに居住者の呼吸空気質制御を目的としたパーソナル換気の概念を加味した新たな換気システム(Personalized- Hybrid Ventilation System:P-HV)を提案し、数値解析技術(Digital Twin)を基盤とした設計法の確立に取り組む. (i) 制御対象となる居住者を再現する精緻な数値人体モデルの開発、(ii) 変動する外界条件下でも自然換気により高効率な成層換気を実現する外気導入手法の提案、(iii) 自然換気とのハイブリッド運用下でも居住域の換気効率最適化する制御ロジックの構築、(iv) 室内に形成される流れ場・温度場・濃度場と人体周辺微気象の連成解析技術の確立、(v) 呼吸空気質の定量的な評価指標(Purging Flow Rate & Transfer Probability)の開発が必須であり、本研究ではこれらを統合した数値解析プラットフォームの開発を目的とする. 上記項目のうち,(i).(iv),(v)に着手しており,本年度は,特に高効率換気方式に着目して研究を行った.共同研究として大阪大学の実験室において実大実験を行うとともに,高効率換気方式に関する先進的な研究が行われているスウェーデン・イェブレ大学にて実験・数値流体力学による結果を議論した.また,我が国の建築分野において,受入研究者でもある伊藤教授,同研究室のYoo准教授,久我助教は数値人体モデルの開発について先進的な検討を行っている.この研究室において綿密に議論をすることで,建築環境内に適用する数値人体モデルの開発に関して国際ジャーナルを共同執筆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高効率換気空調方式を有する室において,給気条件が室内の温度・換気効率,模擬人体周辺という局所的な環境に与える影響を実大実験により検討した.加えて,本換気方式の特徴である給気の衝突噴流について,風速分布を詳細に得た.この結果の一部を国際会議(IAQVEC2023)において発表予定である.加えて,一般的に影響を無視されることも多い排気条件についても設置高さをパラメーターとして数値流体力学により室内環境への影響を検討した.この内容は国際会議(AIVC2023)において発表する予定である. これらは全て大阪大学の小林准教授ら,及びイェブレ大学(スウェーデン)のCehlin准教授らとの国際共同研究として行っており,国際会議における発表後,数値流体力学による追加の検討を加えて国際共著論文として投稿する予定である.このような国際共同研究を円滑に行うため,本年度は,招聘研究員としてスウェーデンのイェブレ大学において1ヶ月程度在籍しており,その際に,当該空調・換気方式の実用例を拝見するとともに,最先端の実験設備による実験とその結果について議論した. 加えて,数値流体力学による室内環境解析の際に重要と考えられる,流入境界における乱流条件が室内汚染質輸送に与える影響に関する検討を行い,その内容を国際ジャーナル(Japan Architectural Review)に投稿・出版された. このように,建築分野における数値人体開発をリードする受入研究室の研究者と密に議論可能であることを有効に活用し,また,高効率換気方式研究や換気効率研究について建築空気環境分野で名高いスウェーデンへ渡航して精力的に共同研究を行なった.その際に得た知見と成果は本研究を大きく進めたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,制御対象となる居住者を再現する精緻な数値人体モデルをについて,今後の研究に実装できる形まで完成させる.これは,室内に形成される流れ場・温度場・濃度場と人体周辺微気象を再現できるように詳細な形状再現と格子分割,境界条件設定により実現を目指す.並行して,自然換気研究において非常に重要な,時事刻々と変動する外界条件を考慮しながら,高効率な成層換気と自然換気を併用して行う場合の最適な外気導入手法を提案することを目指す.この検討は,数値流体力学をもとに行う.その際の制御ロジックも新規に開発する必要があるが,このロジックに前述の数値人体モデルを組み込むことで,より実際的で詳細な制御を可能とすることを,精緻な数値人体モデルを組み込んだ数値流体力学をもとに目指す.これらの検討を行いながら,呼吸空気質を対象とした新たな定量的評価指標(Purging Flow Rate & Transfer Probability)を開発するものとする.
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