2022 Fiscal Year Annual Research Report
log頂点作用素代数の幾何学的表現論とその応用に関する研究
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22J00951
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 祥馬 九州大学, 数理学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / 量子トポロジー / モジュラー形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究目標は、logVOAの具体例の組織的な構成と、その表現圏の構造の理解に大別される。今年度は後者に関しては特筆すべき進展はなかったが、前者に関しては当初の予想を超えた進展があった。 近年、理論物理の観点から、Sergei Gukov氏らによってq-級数に値を持つ3次元多様体Mの不変量(homological block)が導入された。Mが3または4-fibered Seifert多様体の場合、そのhomological blockはそれぞれ(1,p)-logVOA及び(p,p')-logVOAの既約表現の指標で書けるが、一般のN-fibered Seifertに関してはそのような関係は知られていなかった。申請者はN-fibered Seifert多様体のhomological blockが、格子VOAの既約表現の指標にAtiyah-Bottの公式を入れ子式に適用することで計算できることを発見し、対応するlogVOAの幾何的実現を予想した。 一方、(1,p)-logVOAは主W代数のある無限次拡大なので、これを一般のW代数に拡張することは自然である。申請者はAlberta大学のThomas Creutzig氏及び中塚成徳氏との共同研究で、任意のW代数に付随する(1,p)-logVOAを構成し、sl2の場合については詳細な結果を得た。特にaffineVOAの場合を考えることで理論の見通しが飛躍的に良くなり、(1,p)-logVOAでは困難だった様々な問題が簡略化されることが期待される。 さらに、受入研究者の樋上和弘氏との研究で、(p,p')-logVOAとトーラス絡み目の関係を発見した。 これらの結果は近日中に学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はlogVOAの表現圏の構造の研究(log-Kazhdan-Lusztig対応)に関しては進展がなかったものの、logVOAの具体例の構成や研究手法の開発という観点では当初の予想を超えた進展があった。Seifert多様体のhomological blockがAtiyah-Bottの公式で記述されるという結果は、対応するlogVOAが(1,p)-logVOAの入れ子構造を持ち、(1,p)-logVOAで有効だった幾何的手法がそのまま使えることを示唆している。また、affineVOAに付随する(1,p)-logVOAの研究は、具体例の拡充のみならず、幾何的手法の射程や見通しを改善できることを示唆している。これらの研究によって今後の方向性が明確になっただけでなく、研究対象や興味の幅が飛躍的に広がり、大量の研究課題が生まれたため、log-Kazhdan-Lusztig対応の研究が進まなかったことを加味しても研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
N-Seifert多様体に対応するlogVOAの幾何的構成に関しては、まずN=4の場合((p,p')-logVOAの場合)を完成させることを目指す。土屋-Woodの研究から、所望の入れ子構造を作る技術的な鍵は、基礎体を適切に拡大することで良い積分サイクルを構成し、それを用いて幾何的構成に必要なBorel部分群の作用を定義することであると思われる。 さらに、Alberta大学のThomas Creutzig氏及び中塚成徳氏との共同研究を継続し、(1,p)-logVOAに関する結果を任意のgに付随するaffineVOAに対して拡張することを目指す。余裕があれば、(p,p')-logVOAや、負のレベルをもつ(1,p)-logVOAに対してもこれらの手法を拡張することを試みる。さらに、affineVOAに付随する(1,p)-logVOAの結果を用いて、log-Kazhdan-Lusztig対応の証明に必要な結果を得ることを目指す。
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