2022 Fiscal Year Annual Research Report
アレルギー性気道炎症発症の鍵となるT細胞サブセットの同定とその制御機構の解明
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22J10055
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松原 圭佑 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | アレルギー / DOCK2 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはDOCK2欠損マウスが喘息様のアレルギー性気道炎症を自然発症することを見出した。そこで、当該マウスをモデルとしてアレルギーの発症に重要な免疫細胞の分化・維持・病原性機能の獲得の分子基盤の解明を目指している。 網羅的に免疫細胞を解析するために、肺の気道・血管・実質を染め分けてMass cytometry解析を行ったところ、DOCK2欠損マウス肺ではCD4+T細胞が肺実質に多く含まれること、アレルギー病態に寄与するとされるST2+CD4+T細胞が増加していることを見出した。そこで、肺実質における局在を調べたところ、CD4+T細胞は血管周囲にクラスター構造を形成していた。ST2+CD4+T細胞もこの中に多く含まれることから、クラスター構造がアレルギーを生み出すニッチとして機能する可能性が示唆され、PNAT (Pulmonary niche for allergic T cell)と名付けた。PNATには樹状細胞が含まれるが、B細胞はほとんど含まれないためiBALTとは似て非なる構造である。興味深いことにPNATは生後1週間から10日のライスステージ早期に形成され、その後維持される。FCM解析やRNA-Seqの解析からDOCK2欠損マウスではPNATの形成の前後でCD4+T細胞のキャラクターが大きく変化することが明らかになった。具体的には、PNATの形成後、DOCK2欠損マウス全身のCD4+T細胞がTrm様の表現型を持つようになる。生後10日のDOCK2欠損マウスでは脾臓と同程度の数のCD4+T細胞が肺実質に存在することを鑑みると、ライフステージ早期のPNATがCD4+T細胞分化の場となっており、その後の免疫プロファイルに影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目に1.アレルギー性気道炎症の発症に関わるT細胞サブセットの同定、二年目に2.T細胞サブセットの制御機構の解明を行う予定であった。 養子移入や遺伝学的なアプローチから、DOCK2欠損マウスの単一のサブセットではなく、多くのサブセットがアレルギーを誘導するポテンシャルを持つことが示唆された。これらのサブセットはTrm様であるため、Trm様の表現型をもたらす基盤を探索した。一方で、アレルギーと関連する構造物としてPNATを見出した。PNATの形成後にCD4+T細胞がTrm様の表現型を持つようになることから、PNATはアレルギーを引き起こすT細胞の分化の場となっている可能性が示唆された。 1.に関しては詳細な特定に至らなかったものの、2.に関しての知見が得られてきていることから、研究進捗状況はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ライフステージの早期に注目し、PNATの成立機序及び機能を解析する予定である。 また最近、DOCK2の遺伝的多型が日本人集団におけるCOVID-19重症化のリスク因子であることが報告された。当該多型ではDOCK2の遺伝子発現が低下しており、SARS-CoV-2感染ハムスターモデルにおいてDOCK2の機能を阻害すると重症となることから、DOCK2の機能低下が肺炎の重症化の原因であると考えられるが、その詳細なメカニズムは不明であった。私たちはPNATがアレルギーのみならず、ウイルス感染を含む肺炎の重症化にも寄与するとの仮説を立てて、SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスの感染実験を計画している。
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