2022 Fiscal Year Annual Research Report
文派生におけるフェイズの決定要因の研究:通言語的観点から
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22J10125
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
作元 裕也 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 英語学 / 言語学 / 生成文法 / フェイズ / phi素性 / wh島 / 長距離束縛 |
Outline of Annual Research Achievements |
Chomsky (2000)が提案したフェイズ理論のもとでは、文の派生はフェイズごとに進行すると仮定されている。しかしながら、何がフェイズを決定しているか先行研究において議論の一致がみられていない。本研究の目的は、未指定phi素性がフェイズの決定要因 (e.g. Chomsky (2008), Kanno (2008), Saito (2017))であるという仮説を通言語的に実証することを目的とした。 本研究は、一致素性がないと仮定されている中国語 (e.g., Huang (1982))のフェイズ性を追及した。中国語のwh-islandの中から(非顕在的)wh移動が可能であり (Huang (1982))、長距離束縛が可能なことから (e.g. Yang (1983))、フェイズ性がみられないという主張を2022年1月にConSOLE 30で発表を行ったが、その発表のProceedings作成した。更に、日本語のフェイズ性を検討し、研究を行っている。また、中国語と同じように一致が見られないタイ語とベトナム語を分析し、これらの言語にもフェイズ性が見られないと国際学会で発表した。 先行研究で提案されたフェイズ性の診断方法をChomsky (2013, 2015)における自由併合の観点から再考し、英語のv*Pがフェイズであるかどうかに関して以前に発表した内容の帰結を示し、更なる経験的証拠を検討した。フェイズの診断方法に関し論文を作成し、Chomsky (2013, 2015)における自由併合のもとでなぜ連続循環移動の着地点の証拠がフェイズ指定部に限定されているかに関し、Chomsky (1991)等の考えを採用し提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フェイズの決定要因の通言語的研究及びフェイズ性の診断方法の再考を行った。本研究の通言語的研究により、未指定phi素性 (phi素性一致)がフェイズの決定要因であるという仮定を強められた。研究成果として、v*Pフェイズに関する発表を国内学会で行った。更に、ベトナム語、タイ語に関する研究を国際学会で発表した。更に、中国語等の研究に関し、国際学会のProceedingsで公表した。また、自由併合におけるフェイズ性の診断方法の問題点等を論文として纏めた。日本語、韓国語等の現象に関しても研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に行った研究を基盤に、未指定phi素性がフェイズの決定要因であることを通言語的に更に実証していく。令和5年度は、日本語、韓国語等のフェイズ性にも焦点を置き、研究を行う。また、これまでフェイズとA'移動の関係に焦点を当ててきたが、A移動に関しても今後研究を行う。具体的には、Hyper-raising (e.g.,Chomsky (1986))やScrambling (e.g., Mahajan (1990), Saito (1992))に焦点を置き、フェイズ理論 (Chomsky (2000))の観点から研究を行う。また、CP、v*P以外のフェイズ性に関しても研究を行い、フェイズの決定要因を追及する。
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Research Products
(4 results)